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優しく、柔らかく、横尾が笑う。
俺は、そんな横尾を初めて見た。
「俺にも、まだ意味あんのかな……。」
ここに、この場所にいる意味。
それは誰にも肯定は出来ない。
居続けたからといって、必ず歌うたいになれる保証は何処にもない。
長く厳しい道。
それでも俺は……今、横尾にいてほしいと思う気持ちに嘘はなかった。
あの珊瑚色に色付いた歌声は、ひどく優しい色をしていた。
いつも苛ついてすぐに怒鳴る横尾は、もしかしたらずっと自分の意義を探していたのかもしれない。
仲間に置いていかれて、傷つかないわけはない。
もしも、北山に置いていかれたら……俺もたぶん、もうここに居続けることが出来るかわからない。
♪〜〜♪♪〜〜〜♪♪〜〜〜〜
突然、横尾は歌い出した。
相変わらず、少しだけ調子の外れた音程。
だけど柔らかで優しい音。
合わせて俺も歌う。
色付くそれは、甘い珊瑚色。
北山との美しいハーモニーとは全く違うのに、確かに俺の声に絡む橙色の歌声。
茜色に染まった教室で。
心を温める音。
歌声だけが響いて、どちらも何の言葉も発さない。
ただ、静かに流れていく時間。
ひどく穏やかで、優しい時間。
こんなのは、久しぶりだった。
いつも、苛まれる不安は俺を呑み込もうとしていたから。
ただ、そこに横尾がいるだけなのに。
二人だけの、茜色に染まった教室。
柔らかな横尾の笑顔は、彼の歌声のような優しい橙色をしていた。
「寄宿棟、戻ろうよ……ね、渉……。」
思いきって呼び掛けた俺に、一瞬驚いた顔をして。
泣きそうな笑顔で、渉が笑った。
「うん、行こう……太輔……。」
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流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーんo(^o^)oどっちも悪くなくて、どっちも悪い(笑)言葉足らずの二人(笑)長編!?いや、これでも長いって(笑)もう少し短くまとめたかったのにー(^_^;)頑張って書くーっ♪ヽ(´▽`)/ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつもありがとうございます(*´∀`)♪ドキドキと言っていただけて嬉しいです♪ヽ(´▽`)/もう、詰め込み設定は悪い癖ですホント(笑)お話から情景を感じ取ってくださるSIZUKUさんの感性、大好きですー(///ω///)♪ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さぁん(o^^o)壮大な世界観に毎回引き込まれてるよ〜!ミツと太輔の心情が痛くて(TдT)もう、どうしたら〜。物語を彩る美しい情景にもうっとり♪もっと長編プリーズ!っと、ワガママな事を言う読者(笑)移行頑張って!楽しみにしてるぅ!めっちゃ!(//∇//) (2018年6月3日 19時) (レス) id: 6d214b6dc8 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!素敵なお話をありがとうございます。ドキドキします。終わりが来て欲しいような、そうでないような笑 流華さんのお話を頭の中で映像化するもなかなか。だから引き込まれていきます。また更新を楽しみにしてます。 (2018年6月3日 0時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - あーさん» ああ、すみません……早とちりを(汗)お気遣いの言葉ありがとうございます(#^.^#)亀更新ですみません(^_^;)頭の中では出来上がっているのですが、文字に起こしている時間が(笑)ゆっくり進めて行きますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年5月26日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月22日 17時