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その言葉は、橙色に染まる教室でひどく寂しい音を響かせた。
窓の外を見つめる横尾の顔は、寂しげというには儚さに足りず、言葉の温度とは違う色合いを見せていた。
相変わらず、不器用な男だと思う。
寂しいならば、寂しい顔をすればいいのにと。
これでは、慰めることも出来ない。
「俺……辞めようと思うんだよね……。」
「っ!?」
「一緒にいた奴らは歌うたいになったし、もう潮時だろ……俺は。」
「待てよ。」
何かを考えるより先に、思わず声に出していた。
純粋に、嫌だと思った。
大して仲が良いわけでもない横尾。
でも。
あの日、美しい珊瑚色に色付いた歌声。
それはここ最近の俺の中で、唯一北山だけを考えなくてもいい瞬間だった。
俺が引き止めた事が意外だったのか、横尾は若干驚いた顔をして俺を見た。
いや、待って、俺、何言ってんの?
「あ、いや、あのさ……俺は、あの日横尾と歌って気持ちが落ち着いた……よ……」
って、ホントに俺、何言ってんの?
もう、自分が何を言いたいのか、何を伝えたいのかもよくわからなくなって俯いた。
横尾は、短気で怒りっぽくて、こんな俺のわけのわからない話なんか……。
!?
その時、頭に感じる温もり。
横尾の手が、柔らかく俺の頭を撫でていた。
え、ちょっ、……何!?
視線を向ければ、横尾の瞳には薄く水の膜が張っていた。
「横尾……?」
「藤ヶ谷はさ……」
「…………。」
呼び掛けておいて、逡巡する横尾。
眉根を寄せて、まるで不機嫌であるかのような表情だけれど。
もしかして……これ、言葉を選んでる……?
「俺がいた方が、いい……?」
何だそれ。
これだけ溜めて、発した言葉に思わず笑いそうになった。
そんなもの、先程の俺の言葉でわかりそうなものなのに。
「当たり前だろ。」
口をついて出た言葉。
最近は、何も考えずに言葉を発することなんてほとんど無かった。
北山がどう思うか。
そんな事ばかりを考えて言葉を発していた気がする。
なのに、今は。
それは俺の心を軽くするには充分な要素で。
横尾に居てほしいと、本当に心から思った。
「……そっか……。」
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流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーんo(^o^)oどっちも悪くなくて、どっちも悪い(笑)言葉足らずの二人(笑)長編!?いや、これでも長いって(笑)もう少し短くまとめたかったのにー(^_^;)頑張って書くーっ♪ヽ(´▽`)/ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつもありがとうございます(*´∀`)♪ドキドキと言っていただけて嬉しいです♪ヽ(´▽`)/もう、詰め込み設定は悪い癖ですホント(笑)お話から情景を感じ取ってくださるSIZUKUさんの感性、大好きですー(///ω///)♪ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さぁん(o^^o)壮大な世界観に毎回引き込まれてるよ〜!ミツと太輔の心情が痛くて(TдT)もう、どうしたら〜。物語を彩る美しい情景にもうっとり♪もっと長編プリーズ!っと、ワガママな事を言う読者(笑)移行頑張って!楽しみにしてるぅ!めっちゃ!(//∇//) (2018年6月3日 19時) (レス) id: 6d214b6dc8 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!素敵なお話をありがとうございます。ドキドキします。終わりが来て欲しいような、そうでないような笑 流華さんのお話を頭の中で映像化するもなかなか。だから引き込まれていきます。また更新を楽しみにしてます。 (2018年6月3日 0時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - あーさん» ああ、すみません……早とちりを(汗)お気遣いの言葉ありがとうございます(#^.^#)亀更新ですみません(^_^;)頭の中では出来上がっているのですが、文字に起こしている時間が(笑)ゆっくり進めて行きますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年5月26日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月22日 17時