紅桜の鎮魂歌 第二章

橙色の笑顔 F ページ11

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日が、沈む。
空を茜色に染めながら。
それは、空だけではなく全てを染める。
視界に映るものの全てが、橙色をしていた。

あの日、横尾と初めてまともに会話をした日から、俺はこの景色が好きになって、時間が合えばこの時間に空き教室に訪れることが増えた。

二階堂の事件以来、北山との二人の時間は更に大幅に減ってしまった。
玉と宮田に続いて、二階堂と千賀までもが北山に懐いて。
気が付けば、北山の周りには誰かがいる。
今まで、ずっと俺の場所だったはずの北山の隣は必ず他の誰かの場所になっている。

ずっと一緒にいたから、北山の性格もわかってる。
だから、仕方ない……とも思うのに。
心が納得しきれない。

別に北山が間違ってるとか、そういうことじゃない。
ただ……温度が違う。

俺と北山の。

俺と同じ想いを返してほしい。
みんなで会うのは、逢っているのとは違う。
二人で、体温を分け合う時間が欲しいと望むのは我が儘か？

どうして、俺はこんなに北山だけなのに。
北山は違うの？

何もかもが橙色に染まる、西日の差し込む空き教室で俺はぼんやりと外を眺めていた。


「藤ヶ谷？」


「横尾……。」


不意にかけられた声は。
相変わらず、機嫌が良いのか悪いのかよくわからないしかめっ面を晒すこの男。
先日の二階堂の一件に、恐らくコイツは関わっている。
あれから、北山が気にかけて……いや、何となく北山の方が懐いているようにさえ感じる。
俺は正直、それがあんまり嬉しくない。
北山"に"ではなく、北山"が"懐いていることが面白くない。


「そんな、敵意を剥き出しにされてもな。」


知らず強く睨んでしまっていた俺に横尾が苦笑いで返した。
慌てて俺は、表情を和らげた。


「安心しろ、大好きな北山を奪ったりしねぇから。」


「っ!?」


そうして落とされた爆弾に俺は目を見開いた。

え？
バレてる？
嘘でしょ!?
何で!?

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