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がこんっ……



静かな教会内で、音が響く。
何処から?

外ではない。
この、教会の中で、確かに。

俺と藤ヶ谷は、互いにびくりと肩を震わせ、近くにあった木製のベンチの影に隠れた。
整わない呼吸を必死で落ち着かせ、こっそりと音のした方を盗み見た。

音がしたのは、確かに祭壇の方向だった。

祭壇の下の床が、開いている……?
そこから顔を覗かせ辺りをうかがった後に出てきたのは。



「っ!?」



式典や祭典などで、遠くでお姿を確認したことはあるけれど……まさか。
それでも、歌うたいの夢を見た候補生が、歴代最高の呼び声高いお二人を見間違えるはずなどない。









皇帝陛下と紅様────。









まさか、そんな。
出そうになる声を、口を抑えて押し殺した。


「何だよ、こんなところまで連れてきて。」


力強く甘い紅様の声が、静かな教会の中で響いた。
陛下と紅様。
歴代最高と名高いお二人。
情けないことに、熱を持ったはずだったの俺の中心は有り得ない場所で有り得ない人と遭遇したことにより一気に熱を失っていた。
俺達からすれば、正に雲の上の存在のお二人。
恐らくは、藤ヶ谷も同じだろう。


「紅。」


柔らかな陛下の声。
間近で聞くこの人の声は、こんな音色なのか。


「二人きりなのに、何で役職名?」


「タメ口を許してやってるだけ有り難いと思え。本来なら不敬罪だぞ、オマエ。」


咎めるような言葉とは裏腹に、その声は穏やかだ。
陛下と紅様を始めとする七官中の四官の長は、同期生だ。
そこに、気安い空気が流れても何ら不思議はない。


「チッ……んで、皇帝陛下は何の御用ですか。」


それでも、紅様は不服のようだった。
紅様のそんな様子に、陛下は釣り上がり気味の瞳を細め呆れたように愛想を崩した。

そして。

その瞳にスッと力を宿して。
場の空気が変わる。
強く強く、紅様を見つめて。
元々の教会が持つ荘厳な空気に、更に重い緊張感が走る。


「俺は、歴代最高の、皇帝になんぞ。」


一字一句確かめるように言葉を紡ぐ。
虹の華やぎがその声を彩る。
それは、決意の宿る声だ。


「国を、豊かにする。」


「…………。」


「それまでは……俺はオマエだけを想ってはいらんねぇんだ。」


「っ!?」


「そんな俺を、オマエがもう愛せないと思ったら、その時は俺にオマエの色の花をくれよ。」


このお二人……そう、なのか……?

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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時

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