虹の祝福 F ページ35
.
それは、日常的にあることだった。
けれどいつもとは全く違うことだった。
虹の祝福の儀式が終わった瞬間。
目が、合った。
その一瞬、視線が絡んだ。
ただそれだけ。
でも。
それだけで、十分だった。
その瞳に浮かぶ、僅かな揺らぎ。
強く、前だけを見据える北山の瞳に一瞬だけ現れて、そして瞬く間に消え失せた揺らぎ。
焦燥……というのが恐らくはぴったりなそれ。
それを感じ取ったのは、たぶん俺だけ。
他の誰も気が付かないほどの小さな小さな
俺はそれを、見過ごさない。
ずっと見てたから、見過ごすわけないんだ。
玉と宮田を励まして俺を避けるようにして……人の輪から外れていく北山。
その背中が、限界だと言っているのが手に取るようにわかった。
虹の祝福の儀式を終えて、先輩後輩に捕まり俺は北山を見失った。
有り得ない失態だったけれど、北山の行き先には検討が付いていた。
きっと、あの部屋。
北山は今、一人になりたがってる。
こんな寄宿生活では、一人の時間と場所を確保するのも難しい。
俺達の部屋は、今やいつ玉や宮田が顔を覗かせるかわからない。
でも、あの場所なら。
紅様がくださった所々錆が浮き出た赤茶の鍵。
その先。
俺と北山の、秘密の部屋。
俺は、声をかけてくる候補生を上手くかわして、地下室へと急いだ。
古めかしいくせに、音もなく開いたその扉の向こうに見える北山の背中。
ああ、やっぱり。
いつも、毅然と前を向く背中。
俺の前を走っている、頼もしいはずの背中。
けれど今は、その背中が驚くほど小さく見えた。
もう、何も考えずに手を伸ばしてた。
その背中を温めたくて。
空気に溶けて消えてしまいそうな背中を後ろから抱き寄せた。
腕の中に、閉じ込めるみたいに。
「藤ヶ谷……どうした……?」
その声に、いつもの生気はない。
取り繕うことさえ満足に出来ないほど覇気を失ったそれは、北山の今の心境を色濃く表していた。
なのに、それでもまだ俺を気遣う。
どうして、そこまで。
「北山を……探してた……。」
なんで。
辛いなら辛いって言ってほしい。
だってそれは。
その言葉を北山が吐ける相手は。
俺だけだと信じさせて。
416人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時