※ ページ32
.
俺よりも、きっと傷付いているはずだ。
果てしない夢に、喰われそうなはずだ。
俺よりも多く虹の祝福を抜けてきた藤ヶ谷はきっともっと……。
だから、それを慰めたくて俺を後ろから抱き締めて肩に埋める頭に手を伸ばす。
触れたら縋り付いてしまいそうだけれど、それを必死で押し殺して、切なげに揺れる瞳を宿したはずのその頬に触れた。
温もりを持つ頬。
いつも俺よりもずっと低い体温が、ひどく温かく感じて。
俺は笑みを溢す。
ああ……温かい……。
そして上げた顔。
絡む視線。
…………?
もっと儚げに揺れていると思っていた瞳は甘やかに細められて。
宿る慈愛。
ひどく大人びたそれ。
俺は思わず視線を逸らした。
顔に集まる熱の逃がし方がわからない。
なんで。
「……きたやま……。」
至近距離で紡がれた名前は、確かに俺の名前で。
でも、含まれる甘さは知らない甘さで。
その甘さを象る唇が、ゆっくりと緩慢な動作で落ちてくる。
二度、三度と繰り返されるそれは、慰めるような温度で。
それは、俺の心の輪郭を溶かしていく。
「やめっ……、じ、がやっ……」
「やめない。」
俺は、怖かった。
強くありたいと願う心の外郭を溶かすそのキスが。
ほどけてしまう。
挫けてしまう。
心が裸にされる。
藤ヶ谷が、キスをしたまま長椅子の背もたれを長い足で跨いで、俺を組敷いた。
いつもとは逆の、見上げる視界。
初めて見るそれは、藤ヶ谷もまた俺と同じ男なのだと認識させた。
そのキスが、唇から頬に、顎に、首筋へと下がっていく。
「ちょっ……待っ……藤ヶ谷っ……」
「待たない。」
言葉に滲む強い意思。
こんな。
だって、こんな。
組敷かれて上から覆い被さられてしまえば、いくら俺の方が力が強くてもどうすることも出来ない。
もちろん、相手の事を何も考えずただ逃げるだけなら、やりようはあるが。
相手は藤ヶ谷だ。
大事な大事な、守りたいと心から思ってきた藤ヶ谷だから。
触れられることも決して嫌じゃないから。
藤ヶ谷から与えられるどうしようもないほどの甘やかな愛情。
それが、俺を追い詰める────。
416人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時