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誰にも会いたくなかった。
悔しそうに俺を見つめる玉と気にしてない風を装う宮田を励まして笑って。
そして、藤ヶ谷の背中を"次は頑張ろうぜ"と叩いた。

もう、それで限界だった。
それ以上は、醜態を晒してしまう。
特に、藤ヶ谷の傍は俺の何かが決壊していくようで、逃げるように皆の輪から離れた。
けれど、寄宿生活をしている以上は誰もいない所なんてほとんど皆無で。
唯一、思い浮かんだのは……あの紅様に鍵を貰った学習棟の地下だった。
俺は膝を抱えて、長椅子で丸くなった。

どうして。
何で。

今日、虹の祝福を受けた者は年下も多くいた。
学舎での期間は俺よりも短い奴も。
悔しかった。
とにかく、悔しくて。
どうしようもない思いが俺の中で渦を巻く。

どうして、俺では駄目なんだ。
アイツらと俺では何が違う。

何が、違うんですか……陛下っ……

いや、陛下のご意志も鑑みられないはずだ。
揺らいではいけない。
俺が、俺自身を信じられなくなったら終わりなんだ。

それは、わかっている。

けれど消えない、悔しさと焦り。
近付く夢の終わり。
震える肩。
頑張って、頑張って、その先に見えるのか?
本当に、歌うたいになれるのか?

もう、潮時なんじゃないか……?

切望する歌うたいの称号。
先は霞がかり、何も見えない未来。
恐怖が俺を支配する……その瞬間。



「っ!?」



長椅子の背もたれの後ろから、ふわりと温かい腕に包まれた。
鼻腔を擽る甘い香り。
柔らかい腕。

ああ……。

それが誰か……なんて、振り向いて確認するまでもない。
そもそも、ここに現れるのはコイツしかいないのだから。


「藤ヶ谷……どうした……?」


精一杯、取り繕う。
自分でもわかるほどに情けないほど震えていたけれど。
同じように、今回も虹の祝福を受けられなくて候補生としての時間が続く藤ヶ谷。
俺よりも、ずっと長く学舎にいて歌うたいの夢を追い続けた藤ヶ谷。
きっと、俺よりも辛くて苦しいはずだから。


「北山を……探してた……。」


耳元で囁かれる声には、少しだけ掠れて。


「……北山、大丈夫?」


「……なにが……?」


藤ヶ谷の声が持つその甘さに、何かが背中を走り抜けた。
それでも、それをわからないふりをする。
そうしなければ、その声の甘さに縋ってしまいそうだから。

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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時

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