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皇帝は、こんな事が出来るのか。
"虹の奇跡"とは良く言ったものだ。
正にこれは、人智を超えている。


「こっ、こんなことがっ…………はぁっ、……」


「我が行き先を思い浮かべなければ、何処へ飛ぶかもわからんがな。」


肩で息をしながら吐いた言葉に、陛下は悪戯が成功した時の悪ガキのような笑みを浮かべて。
そこに、少しだけ紅様方と無茶をしていた昔が垣間見えた。

ホントに、この人は……。


「しかし、北山……良いものを持っておるな。」


「はい?」


「そなたの歌声は、我の負担を随分と軽くしてくれた。いくら我でも、一人で物質空間移動を行うと疲れるのでな。」


「陛下……。」


「今後を期待しているぞ、北山。」


陛下は柔らかに笑いながら、俺の肩をぽんっと叩いた。
その瞳に親愛が見てとれて。

俺の赤が、陛下の手助けになった……ということか?

それは純粋に震えるほど嬉しかった。
そして、俺の今後を期待してくださる。

この方の為に、働きたいと心の底から思った。
陛下が即位されてから数年。
未だ、次代の皇帝候補……つまり、声が虹色を纏った人間は現れていない。
俺は、間に合うのか。
この方が、皇帝でいる間に……俺は歌うたいになれるだろうか。

いや、間に合ってみせる。
俺は……この方の為に働きたい────。


「北山、今夜の事は他言無用ぞ。」


含みを持たせた笑みを浮かべたまま、陛下はその薄い唇の前で人差し指を立てた。

ワインが切っ掛けで知った、秘密の通路。
そして、初めて目の前で見た虹の奇跡。









俺と陛下の二人だけの秘密は、ワインのような赤紫色をしていた。









「遅かったね。」


あの後、しばらく動くことの出来なかった俺が寄宿棟の自室に戻ったのは、随分と夜が更けた頃だった。

不満そうに言った藤ヶ谷に、俺は理由を話せなかった。
陛下との約束だったから。

藤ヶ谷の顔を見た瞬間に、あの青い日の木漏れ日の中庭が甦った。
あの日、藤ヶ谷と一緒に歌った初めて色付いた歌。
それは……練習歌として学舎で習った歌。
色が灯っても、何の問題もないからと教師から教えられた歌。

今日、陛下と共に歌った歌だった。

あの歌は、虹色を宿さなければ発動しない。
虹色の奇跡。

俺は、色んなことを一気に経験して、何処か浮かれていた。









俺が何も言わないことが、また藤ヶ谷を不安にさせているなんて、考えもしなかった。

虹の祝福 Ki→←※



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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時

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