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「これは……。」
「まぁ、緊急時の脱出路……とでも言うかな。」
「……これは、何処に繋がっているのですか?」
「我の私室と謁見の間と……その他諸々だ。その内ひとつは知っているであろう?」
!?
あの教会の祭壇か!?
マジか、あれは城下のはずれだぞ?
あんなところまで地下通路が伸びているのか!?
しかも、陛下の私室にまで繋がっているなんて。
こんなもの逆に陛下を危険に晒すのではないかと考えてしまった。
「案ずるな。七館の長とて限られた者しか知らぬ。」
考えを読んだように、陛下は笑いながら言った。
そんな重要な秘密を自分が知っても良いのかと、俺は少し不安になる。
全部を見透かしたように、くすくすと笑う陛下は……わりと意地悪なのかもしれないと不敬罪になりそうなことを思った。
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「北山。」
「はい。」
「因みに、そなたはここで何をしておる?」
「あ、はい。明日の晩餐会で振る舞われるワインを厨房に運んでおります。」
「あの量を一人でか……?」
「……はい……。」
体よく押し付けられたようなものだ。
まだ若いし力もあるし、何より候補生は従順だからだろう。
苦笑いで答えた俺に、陛下も苦笑いで返した。
「ならば、手伝ってやろう。」
「!?、いえ、それはっ、」
畏れ多くも陛下に手伝いなどさせたら、間違いなく不敬罪で極刑になる。
しかも、恐らくは俺だけでは済まないだろう。
焦って断る俺に陛下は再び笑って。
「何も手で運ぶなどとは言ってはおらん。」
「は?」
「そなた、声に色は付いたか?」
「は、……?あ、はい。微量ではございますが。」
「何色だ。」
「赤でございますが……」
「アイツのところか……。」
俺の色を確認した陛下の瞳に、少しだけ柔らかな慈愛が宿る。
ああ、もう本当に、この方は紅様を愛していらっしゃるのだ。
それが、目に見えて伝わってきて、俺は少しだけ恥ずかしくなった。
俺も……藤ヶ谷を想うとこんな瞳をしているのだろうか……?
「今から歌う旋律を覚えろ。」
「はい?」
「良いから、覚えろ。」
「は、はい。」
そうして、陛下が歌う。
高く、低く、伸びやかに心地よく。
短い一小節。
俺は、一音も漏らさず耳を澄まそうとした。
しかし。
この歌は。
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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時