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「北山……だったか?」
白い影が、俺を呼んだ。
お、お、お、俺、幽霊に知り合いとかいませんけどー!!!
驚きすぎて固まっている俺に、その白い影が近付いて薄暗い中でその顔が確認出来た。
その顔は。
俺は更に驚いた。
こんな所で会うはずのない相手だったから。
「へ、いか……?」
「久しいな。北山……だったな?」
頼りない蝋燭の灯りに照らされて、片側の口角を上げて笑うのは、あの白の誓い以来に合間見える皇帝陛下その人だった。
ぱくぱくと言葉にならずに口を動かす俺に、陛下はくつくつと喉の奥で笑っていた。
「っ、このような所で、何を……。」
俺は、安堵と驚嘆でその場にしゃがみ込んだ。
こんなところに、この国の皇帝が人知れずいるなんて誰が思う。
「寝る前にワインが呑みたくなってな。驚かせたようで、すまない。」
陛下の言葉遣いは、あの日に聞いたものとは随分と違っていた。
それでも、覚えていてくださったことに妙な高揚感が生まれる自分を感じる。
しゃがみ込んだ俺を覗き込むように上体を屈めた陛下の首元で細い銀の鎖が見え隠れした。
俺は、いつまでもしゃがみ込んでいるわけにもいかず、慌てて居住いを正す。
「いえ。ですが、誰かに持って来させればいいのでは?」
「自分で選びたくてな。」
事無げに言った陛下の横顔は、何故か少しだけ寂しそうに見えた。
紅様がいないから、眠れなかったりするのか?
しかしそれを問うてはいけないような気がした。
何より、この人の決意を知っているから。
「陛下は、どちらからここに?」
俺は、浮かんだ考えを誤魔化すように先程の疑問をぶつけた。
ここは厨房から直結だ。
奥に扉があるようには見えない。
ならば、陛下は何処から……。
「まぁ……そなたなら、いいか。」
「はい?」
「着いてこい。」
陛下は、俺に背を向けて奥へと進み始めた。
慌てて追いかける俺は、何だか滑稽で。
そんな俺を振り向くことなく進んだ陛下は、壁際に並べられたワイン樽の一つの前で足を止めた。
かたん……
先程聞こえた音と同じような音を立ててワイン樽を開けると、そこにワインは入っていなかった。
「え……。」
壁際に貼り付くように置かれたそのワイン樽の中は空洞で、壁さえもぶち抜いて更に奥へと続いていた。
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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時