赤紫の秘密 Ki ページ24
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俺は、運が悪いのか?
目の前に積まれたワインの瓶に深く溜め息が出た。
授業終わりの夕方、またも教師の一人に捕まり手伝いを頼まれた。
何だかわからなかったが、心象は良い方がいいだろうと引き受けて、それが寄宿棟から空中回廊を抜けて城へと入城するまではわくわくした。
候補生はあまり城へ入れるものではないから。
そして、連れてこられた城の地下。
薄暗い階段を降りた先にある、これまた薄暗いワインの貯蔵庫。
学習棟の教室の何倍もあるような広い空間に、ところ狭しと寝かされているワインの瓶。
奥にはワイン樽がいくつもそのまま置いてある。
そして、その教師は城の給仕係だという人に俺を紹介して帰っていった。
給仕係の人は俺に紙を手渡し、ここに書かれているワインを厨房へと運び込むようにとだけ言って姿を消した。
この量、マジか。
俺は、紙に書かれた膨大なワインの量に絶句するしかなかった。
明日は紅様と碧様が帰還される。
もうすぐ雨季がくる地方で、川の反乱に備えて土嚢を積み上げて防波堤を作る為に碧様が中心となった派遣団が組まれた。
緑の歌うたいだけでは手が足りなかった為、屈強なる戦士の赤の歌うたい達が駆り出されたのだ。
もちろん、紅様までが出張る必要はなかったが、元来好奇心が旺盛な紅様が遊び心も含めて城を飛び出した。
その派遣団が帰還する晩餐会に出されるワインだった。
これ、一人でやることじゃねぇだろ。
そうは思っても、所詮は候補生。
文句の言える立場ではない。
腹を括って始めるも、とにかく重いのだ。
もう何度厨房と貯蔵庫を往復したかもわからなくなっていった。
そして、半分を終えて握力に限界を感じ始めた時だった。
かたん……と、物音がして。
俺は音のした方を振り向いた。
しかし、そこには何の姿はなく。
え、ちょ、何?
薄暗い地下貯蔵庫が急に恐ろしいもののように思えてきた。
何故なら、このワイン貯蔵庫は厨房から直結している。
俺は何度も往復をしているが、その間に誰にも会っていない。
もしも、ワイン樽の奥に出入口があれば話は別だが、ここからは扉らしきものは確認出来なかった。
霊の類いとか、そういうものを信じているわけではないが、こんなに薄暗く誰もいないはずの場所で音がするのは……気持ちのいいものではない。
「誰か……いますか?」
俺は思わず声をかけた。
目を凝らした時、そこでふわりと白い影が揺れた。
「っ!?」
声にならない悲鳴を上げそうになったその時。
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流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪ヽ(´▽`)/もう、その頭の中で映像が描ける感性が素敵ですねっ(≧∇≦)SIZUKUさんを含め、皆様の妄想力に助けられております、はい(笑)続きも頑張りますo(^o^)o (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ゆうりんさん» はじめまして、こんにちは。コメントありがとうございます(#^.^#)世界観、わかって頂けて嬉しいです♪♪あー…ですよねぇ?(笑)徐々に歪み始めてるのに、全く気付いてないですよね、赤い人(笑)頑張って更新しますので、お付き合いよろしくお願い致します♪ヽ(´▽`)/ (2018年3月22日 17時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!このお話が私の頭の中で映像化されていってます。細かな心情や風景の描写が映像を鮮明にしてます。また現実とリンクして私の頭も心も忙しいです笑 続きが楽しみです。移行前にもう一度初めからおさらいしておこうかな。 (2018年3月21日 15時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - はじめまして!壮大なお話でその世界にどっぷり浸かっちゃってます。7人の歌うたいのこれからがきになるとこですが、それよりも藤ヶ谷さんと北山さんの関係が気になって…早く気づいてあげて北山さん!これからの展開も楽しみです! (2018年3月20日 22時) (レス) id: 9cddd8b82f (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ましろさん» ドストライクだなんて、恐縮です(汗)もう、書きたいものを気の向くままにだらだらつらつら書いてるだけですから(^_^;)そんな文章からそこまで感じ取ってくれるましろさんの感性が大好きです♪♪♪続き、頑張りまーすo(^o^)o (2018年3月19日 16時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月1日 16時