紅桜の鎮魂歌

黄色の揺らぎ Ki ページ16

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「もう、いいっ!!!しばらく、後で見てろっ!!!」


学習棟の教室に、教師の怒号が響く。
繰り返される実習と座学。
日々本当に微量ながら歌声が色付いていく候補生が多い中で、落ちこぼれていく者も少なからずいる。
そして、落ちこぼれてしまったことで歌うたいの夢を諦めて学舎を退学していく者の姿もあった。

俺と藤ヶ谷は、早い段階から声色が安定し既に誰の目から見ても色が識別できるほどになっていた。
そして、俺達は一緒に歌うと更に色合いが美しくなる為、セットで扱われることがどんどんと増えていく。

地方の町や村へ歌うたいを派遣する際は、補助として連れて行かれることもしばしばあった。

そんな、地方へ行った後に久しぶりに学舎に顔を出した授業で叱られている二人。
年端もいかない年齢の子供が集まるのだ。
揶揄するように、好奇の視線が二人に注がれていた。
嘲笑さえ浮かべている者もいる。

そんな扱いしなくてもいいのに。

そんな風には思うものの、俺自身にも余裕があるわけではなく。
それを庇ってやる気にはならなかった。

教室の隅で肩を寄せ合い小さくなった二人は、悲しげな表情で皆の歌を聞いていた。


その瞳に、もうひとつの感情が渦巻いているように見えて、ひどく印象に残った。


「あー、重い……。」


学習棟には、使われていない教室もいくつかある。
そこは、月日の流れと共に資料室のようになってしまったものもあり、過去の歌うたいや候補生の資料がうず高く積み上げられていた。

運の悪いことに俺は、そこにある資料を教材として使うから取ってきてくれと教師に頼まれた。

てか、重すぎだろ……。

頼まれた資料は、結構な量で一人で持つにはかなりの負荷がかかった。
それでも、引き受けてしまったものは仕方ないと空き教室が並ぶ廊下を歩いている時だった。


「オマエら、もう辞めたほうが良いんじゃね？」


「そうそう、オマエらみたいな落ちこぼれがいると士気が下がって迷惑なんだけど。」


そんな声が聞こえた。
一瞬、何かと思った。
疑問に思い空き教室の中を覗き込むと、5、6人が誰かを取り囲んでいる姿が見えた。
もうそれだけで、中で何が起こっているのかがわかってしまう。



面倒くせぇ……。

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