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ピッ


「OKです。北山さん、そのまま藤ヶ谷さんに凭れかかってください。」


ピッ


「藤ヶ谷さん、北山さんの肩に手を掛けてください。」


ピッ


指示の声に従ってポーズを変えていく。
雑誌の撮影は今までに何度も受けてきた仕事で、もしかしたら一番慣れた仕事かもしれない。

特に、北山とのペアショットは。

指示通りの距離感に、北山がいる。
恐らくは、雑誌の撮影かライブのパフォーマンスの時にしか有り得ない、普段の距離感よりも大幅に近い肌が触れるほどの距離。


それはとても近い。
近くて近くて、とても────遠い。


あの日の事は、互いにもう触れない。触れられない。
北山は変わらない───表面上は。
ただ、ひとつを除けば。


ピッ


「OK、さすが藤北ですね。」


「んはは、誉めても何も出ないですよ。なぁ、藤ヶ谷?」


「うん。」


変わらぬフリをして俺に笑いかける北山の首を傾げた動作に添って黒髪(・・)がふわりと揺れる。
あの日、光を纏って周囲を柔らかく染め上げた銀の髪は、次の仕事用に黒く染められていた。

それはそれは美しい、(からす)の濡れ羽色。

見慣れたはずの黒髪に、ゾクリとするほどのストイックさを感じて。
まるで新雪を踏み荒らしたいような気分になった俺は本当に救いようがない。


「いやいや、これからもよろしくお願いしますね。」


「こちらこそお願いします。」


他の誰も気が付かない。
俺と北山の間に起きたこと。

恋は、甘いだけではない。
もしかしたら、苦いことの方が多いかもしれないのに、何故人は恋をするのだろう。



まぁ・・・俺の場合は相手が悪いか・・・。



恋を、していい相手じゃない。
その容姿はとても愛らしいものであっても、北山は男だ。
その上、今までもこれからも背中を預ける相棒なのだから。
どれほど望んでも掴める相手ではないことは、初めからわかっていたことだった。

撮影を終えて、控え室へ向かう俺達に会話はない。
互いに避けているわけではないけれど、恐らくは互いに何を話したらいいのかわからないのも事実で。
一人分の隙間が、如実にそれを物語っていた。

けれど。


「藤ヶ谷。」


ああ─────・・・


どうしてわかってしまうのだろう。
どうしてそのままにしておいてくれないのだろう。

それはきっと、俺と北山だから。

わからなければいいのに。
放っておいてくれればいいのに。









呼び掛けられた声には、決意が宿っていた。


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流華(プロフ) - sioriさん» 一番乗りコメント、すごい嬉しいです♪♪やっぱりここを少しだけスクロールすると「作成日時」が残るじゃないですか。その日付を残したくて(笑)素敵な恋!?(笑)んー・・・素敵な恋もそれなりにありましたけど、素敵じゃない恋もたくさんありましたよ(笑) (2021年9月18日 23時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さん、やった!1番(笑)北山くんの誕生日に続編を更新してくれて嬉しいです!そしてやっぱり流華さんの言葉選びが本当に大好き。どんな素敵な恋をしてきたんですか?(笑)ふふ。この先どうなっていくのか楽しみです! (2021年9月17日 18時) (レス) id: 2b4c1e0fcf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流華 | 作成日時:2021年9月17日 18時

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