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はっきり言って、気に入らない。
俺は違うのに。
オマエとでなければ、あの領域には辿り着けないのに。
どうしてオマエはいつも。いつも。
憤りを抱えた俺は、部屋に入るとそのままキッチンへと直行し、シンクにミネラルウォーターのを置いて冷蔵庫を開けた。
再び取り出すアルコール。
リビングのソファに戻って、プシュとプルタブを開ければ炭酸が抜ける音がする。
それを、呷るように傾けた。
ゴクリ、ゴクリ、と喉を通っていくアルコール。
心を渦巻く感情は、己の感情ながら複雑すぎてもうよくわからない。
悔しくて。
気に入らなくて。
ムカつくのに。
頭の中の北山は・・・
綺麗で。
艶やかで。
儚い。
ああ、これは・・・
何度も何度も、リピート再生のように脳裏に甦るあの日の洋館での北山の姿。
その指先から奏でられる魔力を秘めた音たちが、彩なる空気に浮き上がる。
ほんの少し風が吹けば消えてしまいそうな儚さを孕んで、光の中で踊っていた。
そして・・・そう・・・
そっと─────・・・思考を奪っていく。
あの日、音の魔力に囚われそうだと確かに感じたのだ。
緩やかに開かれた瞳が光を反射して、揺れながら琥珀色に煌めいて。
見つめる程に色を深くし、瞬きの度に透き通る。
あの琥珀の中にはどれほど幻想的な世界が広がっているのだろうか。
もしも。
もしも、その瞳の中に囚われたならば・・・
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.
俺は、
幸せ、なのかもしれない──────・・・。
.
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っ!?、
カタン───────────・・・。
手からアルミ缶が滑り落ちて、フローリングの床に当たって鈍い音を立てた。
缶の中に残っていたアルコールが炭酸を弾けさせながら、とぷり、とぷりと床に広がる。
普段ならば、早く拭かなければと動き出すはずの身体と心は一切動かない。
それどころではない。
俺は、今、何を、思った──────・・・?
囚われたいって・・・何だ、それ。
ひどく危ないその思考。
誰が?
誰に?
俺が?
誰に?
俺が・・・
・・・北山に──・・・?
ドクン────────────ッ
己で至った考えが、ひどく恐ろしいもののように感じるのに・・・その考えを肯定するように、鼓動がひとつ大きく鳴った。
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流華(プロフ) - さゆさん» さゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。表現と描写は、本当に気を遣っている部分なので、そこを誉めてくださると嬉しくて更に頑張ろうと思えます。活力をくださってありがとうございます。今後も頑張りますので、移行後もよろしくお願い致します。 (2021年9月17日 18時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ユキさん» あははー。良いところで狙って切る癖は、今も健在です(笑)でも、ホントにこのお話はノリとか勢いで書き始めたところがあるので、そんな感じに軽いです(笑)上質と仰っていただけること、本当に嬉しいです♪♪今後もお付き合いくださいませー♪ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 言葉の遣い方がとても綺麗で、文字数が多いのに一言一句しっかりと目で追ってしまいます!本当に素敵です!移行先でも楽しみにしています! (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4e568979a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - うわ!そこで移行ですか!!!笑 めっちゃ気になりますーー!上質なお話を読んでいたのに「面白いそー♪」って流華さんのノリの温度差に笑ってしまいました笑 続き楽しみにお待ちしてます☆ (2021年9月12日 13時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーん♪♪にゃはは〜だって、狙って切ってますもん(笑)読み返してくれたんですか!?嬉しーです♪♪今回は伏線無しだから、謎とかも無いですけど楽しんでくれたら十分です♪sioriさんが読んでると気合いも入るので!!! (2021年9月12日 12時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年8月11日 13時