あの頃の俺に ページ40
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「とりあえず、そこ座ってて。」
誰かこの状況を説明してくれ。
二人でご飯だってもう何年ぶりかもわからなかったのに、俺は今・・・北山の家の落ち着いた木目の家具に彩られたリビングにいる。
その状況に俺は心が付いて行けていない。
ずっと、北山には本当に説明出来ない想いを抱えていた。
色んな感情が混ざり合って、複雑すぎて俺にも何色をしているのかわからない・・・と思ってきたんだ。
それが、恋情の色を宿していると気が付いたのが、つい先日で。
ある程度自分で色々と整理したことで、意外にもスンナリと受け入れられてしまった感情ではあったけれど。
さすがにこの状況は想像していなかった。
「えーっと、この前買った度数の低いヤツ・・・」
カウンターの向こう側で、冷蔵庫の中に頭を突っ込んで独り言を呟く北山。
俺は、おとなしくリビングのソファに座っていた。
気にしなくていいよとも、手伝おうかとも言えそうにはない。
カチャカチャと陶器やグラスの音がして。
「ほい、お待たせー。」
北山は、美味しそうなおつまみを二品出してくれた。
そうして、最後に二脚のグラスと黒い瓶と緑の瓶を持って。
「え、何これ!?変わったグラス・・・。」
「面白いだろ、これは見た瞬間に即決だった。」
北山がローテーブルに置いたグラスは、シャンパンなんかを飲む時に使う縦長のフルートグラス。
フルートグラス自体はそれほど見慣れないものではないけれど、その飲み口が斜めにカットされているグラスは初めて見た。
そして、反対の手に握られていたのは黒いラベルにピンクの桜が散りばめられた細くて優美な黒い瓶と、全く同じサイズの鮮やかな緑色の瓶。
「これ見たとき、藤ヶ谷っぽいなーって思ったんだよね。」
黒い瓶の蓋を開けて、北山はゆっくりとそのお酒を俺の前に置いたフルートグラスに
「!?」
ああ、俺っぽいってそういう意味か・・・。
シュワシュワと発泡しながら注がれるそのお酒は見事なピンク色だった。
ロゼワインのような透き通るような美しい薔薇色ではなくて、薄にごりの和を感じさせる桜色。
「美味しそうじゃん。」
「マジで美味いぞ。」
ドヤ顔で笑う顔は未だに少し幼さを匂わせるから、童顔とは不思議なものだ。
この、うちのグループの最年長は、六歳という年の差をものともせず、恐らくは最年少に見えることもあるだろう。
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流華(プロフ) - さゆさん» さゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。表現と描写は、本当に気を遣っている部分なので、そこを誉めてくださると嬉しくて更に頑張ろうと思えます。活力をくださってありがとうございます。今後も頑張りますので、移行後もよろしくお願い致します。 (2021年9月17日 18時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ユキさん» あははー。良いところで狙って切る癖は、今も健在です(笑)でも、ホントにこのお話はノリとか勢いで書き始めたところがあるので、そんな感じに軽いです(笑)上質と仰っていただけること、本当に嬉しいです♪♪今後もお付き合いくださいませー♪ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 言葉の遣い方がとても綺麗で、文字数が多いのに一言一句しっかりと目で追ってしまいます!本当に素敵です!移行先でも楽しみにしています! (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4e568979a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - うわ!そこで移行ですか!!!笑 めっちゃ気になりますーー!上質なお話を読んでいたのに「面白いそー♪」って流華さんのノリの温度差に笑ってしまいました笑 続き楽しみにお待ちしてます☆ (2021年9月12日 13時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーん♪♪にゃはは〜だって、狙って切ってますもん(笑)読み返してくれたんですか!?嬉しーです♪♪今回は伏線無しだから、謎とかも無いですけど楽しんでくれたら十分です♪sioriさんが読んでると気合いも入るので!!! (2021年9月12日 12時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年8月11日 13時