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もう仕方ないと半ば自棄になって、俺は口を開いた。
もしかしたら、本当は誰かに話したかったのかもしれない。
「ピアノを弾いてる北山は、何か・・・知らない人みたいに見える・・・」
『え・・・』
「何て言うか……もちろん知ってるはずなんだけど、纏う空気感というか眼差しとか・・・とにかく、違和感がひどくて・・・居心地悪い・・・。」
上手く説明出来ている気がしなくて歯切れの悪い俺と、それを受けて目を見開いて俺を見る渉。
最近のスマートフォンは優秀で、驚いたように小さく上げた渉の声さえも拾った。
『そっか・・・そうなんだ。太輔には、そう見えるんだ・・・』
独り言みたいに勝手に納得してしまう渉に、今度はこちらが困惑する。
え?渉?なに?どういうこと?
それはまるで、俺にとっては知らない人みたいだった北山を、知っているかのような渉。
「わた・・・あの北山・・・見た、こと、あるの・・・?」
言いながら感じる、明らかで確実な───不快感。
ポツン─────・・・と、ひとつ、染みのように心に落ちる黒点。
それが、波紋を描いてじわじわと広がっていく。
俺が。
この、俺が、知らないのに。
渉が・・・他の人間が、知っているなんて。
そんなの。
そんなの。
『うん・・・てか、太輔以外は、みんな知ってるんじゃないかな。』
っ、!?
心の中で、一気に黒点が広がって膨れ上がる。
黒く黒く広がる正体不明のそれは、徐々に濃さを増しながら確実に心の中を侵食していく。
まるで、月も星もない夜空を写し取った真っ黒な海のような。
呑み込まれてしまったなら何も残らない程の濃く深い闇色。
『太輔・・・?』
「っ、!?、ごめっ、・・・なん、でも、ない・・・。」
怪訝な顔で俺を気遣う渉の声。
それに取り繕うように返事をすれば、渉が今度は怪訝な顔をしながらも流してくれた。
・・・・・・驚いた。
己の内で、瞬時に荒れ狂うように膨れ上がった感情。
それが何か、わかっている。
もう、それなりにいい歳で。
この年齢まできて、己の中に生まれる感情が何なのかわからないほど鈍くはないつもりだ。
けれど。
けれど。
この感情を向ける相手が違いはしないか?
そう思った時、渉から投げられた言葉に俺は更に混乱した。
『太輔は、あのミツを外から見るのは初めてだもんね。』
え─────────・・・・・・
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流華(プロフ) - さゆさん» さゆさん、こんにちは。コメントありがとうございます。表現と描写は、本当に気を遣っている部分なので、そこを誉めてくださると嬉しくて更に頑張ろうと思えます。活力をくださってありがとうございます。今後も頑張りますので、移行後もよろしくお願い致します。 (2021年9月17日 18時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ユキさん» あははー。良いところで狙って切る癖は、今も健在です(笑)でも、ホントにこのお話はノリとか勢いで書き始めたところがあるので、そんな感じに軽いです(笑)上質と仰っていただけること、本当に嬉しいです♪♪今後もお付き合いくださいませー♪ (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 言葉の遣い方がとても綺麗で、文字数が多いのに一言一句しっかりと目で追ってしまいます!本当に素敵です!移行先でも楽しみにしています! (2021年9月12日 14時) (レス) id: 4e568979a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - うわ!そこで移行ですか!!!笑 めっちゃ気になりますーー!上質なお話を読んでいたのに「面白いそー♪」って流華さんのノリの温度差に笑ってしまいました笑 続き楽しみにお待ちしてます☆ (2021年9月12日 13時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーん♪♪にゃはは〜だって、狙って切ってますもん(笑)読み返してくれたんですか!?嬉しーです♪♪今回は伏線無しだから、謎とかも無いですけど楽しんでくれたら十分です♪sioriさんが読んでると気合いも入るので!!! (2021年9月12日 12時) (レス) id: 9ee96bd060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2021年8月11日 13時