その指先に愛を乞う

※ ページ15

.



これも、癖･･･なのだろうか？

俺も北山も、二人のことを聞かれると話を敢えて逸らしていく。
示し合わせたわけでも、そうしようと決めたわけでもない。
何となく、そうなっていった･･･というのが正しい。
俺が話を逸らす理由は。

どう答えたらいいのかわからないから。

それに尽きる。
北山のことは、もちろん大切だし必要だと思っている。
けれど、どんな関係で、そして好きなのか？と問われると、答えに窮するのだ。
恐らくは昔、誰よりも近い距離にいた頃ならば、臆面もなく内にも外にも「大好きだ」と公言出来ただろう。

でも、もう･･･今は。


「僕ね、君らのこと面白いグループだと思ってたんだよね。」


「え？」


「君らのファンじゃない僕でも、君らのことを面白いと思ってたわけ。」


「はあ･･･。」


「でもその代わり、君らが格好良い面は全く知らなかった。」


「!?」


「だから、格好良い面を出したくてね。」


俺の思考をよそに北山が話を進めていく中で、甲斐さんはニヤリと口の端を歪めて悪ガキのような笑みを浮かべた。
そうして、重厚感のある格式高い洋館でカメラが回されていく。


「玉森くん、あと少しだけ俯いて。あー行き過ぎ。そうそう。そのまま藤ヶ谷くんに視線を向けて。で、天井見上げて。」


「北山くん、もう少し左に首傾げられる？うん、いいね。そのままゆっくり後ろへ下がって。藤ヶ谷くんの背中に触れたらそこでストップ。」


「二階堂くん、半歩左に寄って。千賀くんの肩に右腕かけて。そうそう、それからゆっくりこっち見て。」


「千賀くんはそのまま一回俯いて、そこからカメラ見て。少しクールに。」


「宮田くん、玉森くんに寄って。で、玉森くんに視線を向けたら玉森くんの視線を追うように見上げて。うん、いいよ、二人とも。」


「横尾くんは、玉森くんの後ろから回って。藤ヶ谷くんの肩から滑らせて北山くんの肩から腕に触れて。で、視線こっち。」


「あー、藤ヶ谷くんはさすがだね。うん、そのまま少しだけ北山くんの背中に凭れて。二人とも自分の足下から視線をゆっくり俺の足下まで移動させて。OK、そこからカメラ見て。あーうん、いいよ、格好いい。」


甲斐さんの指示は的確でわかりやすい。
真っ白な正装に身を包み、甘い微笑みやクールな眼差しを甲斐さんが求めるままに俺達は演じていった。

ブドワール→←※

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す