桜の下で待ち合わせよう12(完) ページ50
A「やっべー!山田に怒られる!」
ーー三年後の春。始業式の朝、私は通い慣れた通学路をバタバタと走り抜けていた。
岩泉『ったく…お前は始業式から何してんだよ』
電話口でため息をつくのは、去年のクラスメイトの親友、岩泉。始業式に遅刻したらマズいからと、モーニングコールをお願いしていた相手だ。…結果、鬼電されても全く起きれなかったんだけど。
A「まったく…もっと気合い入れてモニコしてくれたまえよ!」
岩泉『何で俺のせいになってんだよ!!』
岩泉が声を張り上げたと同時、渡ろうとしていた信号が赤になり、私は足を止める。荒くなった呼吸を整えながら、空を振り仰ぐと、ひらひらとピンク色の花びらが風に乗っているのが私の視界に映りこんだ。
ーー桜。
私は桜を見ると、何か思い出されることがある。
A「…そういえば私さあ、中学の頃に変なおじさんに会ったんだよね」
岩泉『は?』
A「その人にさ、すごく背中を押されたんだよね。顔も、声も、掛けてくれた言葉も、何でか思い出せないんだけど…桜がどうとかおじさんが言ってた気がして」
岩泉『…何だよそれ。夢の中での話か?』
A「夢…夢か…そうかも。夢だったのかもしんない」
岩泉『おい、寝ぼけてんのか?』
夢であれ現実であれ、あの瞬間、色がなかった世界に光が通されたような感覚がした。私はあの時、救われた。
私と同じく信号待ちをしていたサラリーマンが信号を渡り始めるのにはっとすれば、歩行者信号が青に切り替わっていた。
A「ううん!もう目は覚めた!」
ーー夢から目覚めたなら、歩き出す時間だ。
また学校で会おうと岩泉に言って、通話を終了させる。スマホをバッグに仕舞うと、軽快に地面を蹴って走り出した。
日々の探索で見つけた近道を使い、桜並木を駆け抜ける。やっと着いた学校の裏門は固く閉ざされていて、むむと顔を顰めるが、ハッと閃いて、横のフェンスに足を掛けてよじ登った。
よ〜し、チョロいチョロい。
なんて、鼻歌を歌いながら飛び降りようとするが、思いの外そこは高くて、怖さに足が竦んだ。
その場にしゃがみこんで途方に暮れる。ひらひらと地面に向かって舞い落ちていく桜の花びらを目で追っているとーー、
A「あ」
そこにやって来た知らない男子を視界に捉えた。
救世主!救世主だ!良かった!助けてもらおう!
A「ちょっとそこの人!」
桜が舞う中、私はそこに立つ彼に呼び掛けた。
(END)
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スナック杏月(プロフ) - ゆんさん» ゆんさんいつもコメントありがとうございます!そして最後まで見届けて頂き本当に励みになりました!私もほっとしたような寂しいような心境です😢国見ちゃん×後輩ちゃん話でも最後まで飽きずに着いてきて頂けるようなお話を丁寧に綴っていけたらと思います🥰 (2023年1月28日 0時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - あぁぁ😭ついに一番好きなシリーズが完結してしまった😭💕嬉しいような寂しいような、、、でも次の国見ちゃんの話を楽しみに生きていきます🥺 (2023年1月27日 0時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - なぅさん» 遅れあけましておめでとう!今年はまったりと執筆していくので気長にお付き合いよろしくね🥲 (2023年1月12日 12時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
なぅ(プロフ) - 𝐻𝑎𝑝𝑝𝑦 𝑁𝑒𝑤 𝑌𝑒𝑎𝑟☆占い師及川愛す𝐟𝐨𝐫𝐞𝐯𝐞𝐫☆ (2023年1月2日 1時) (レス) @page43 id: 061659d46e (このIDを非表示/違反報告)
スナック杏月(プロフ) - おもちさん» おもちさんお久しぶりです!私も長らく占ツクを離れており、最近執筆再開をしました😢おかえりなさい!素敵な作品が多い中最初に開いてくれて嬉しいです😭温めてきた二人のお話を最後まで丁寧に綴っていきますので最後までお見届けよろしくお願いします! (2022年12月24日 2時) (レス) id: 011dd4e45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2022年4月7日 1時