【及川徹】0キロメートルの愛 2nd【番外編】

桜の下で待ち合わせよう８ ページ46

Aちゃんは戸惑うように少し瞳を揺らすと、こくりと頷いた。


A｢…うん。だから私、手抜いたりしないで頑張ってきた｣

及川｢そっか。それはすごいことだと思うよ。…でも、誰かの気持ちに応えるために、キミ自身が疲れちゃうなんてしんどいよ｣


息を吸い込む。Aちゃんの細い両肩に手を置くと、力強く言葉を掛けた。


及川｢ーー大丈夫！｣


Aちゃんの目が大きく見開かれる。

毎日、そうであって欲しいと思うけれど、幸せばかりではいられない。必死に掴んだ幸せの後には、すぐに不安の波がやってくる。でもーー、


及川｢先のことを焦らなくたっていい。もっと軽く考えていいんだ。…キミはちゃんと自分で道を選べる子だよ｣


いつまで待てばいいんだろう。どれくらい頑張ればハッピーエンドに辿り着けるんだろう。
…そうやって、苦しくてどうしようもなくなる日は、これから先たくさんやってくる。

でも、自分のために、誰かのために、何を選ぶのか。たくさん迷って、選んできたキミを知っているよ。


及川｢だから、大丈夫｣


Aちゃんの目を真っ直ぐと見つめたまま、にっこりと笑いかけた。


A｢……ねえ、おじさん｣

及川｢ん？｣

A｢私とおじさん、どこかで会ったことある？｣

及川｢えっ｣

A｢私はおじさんのこと知らないんだけど…もしかして子供の頃に会ったりとかした？｣


不思議そうに首を捻るAちゃんを前に、俺の心臓は驚いてどくどくと大きく鼓動を打っていた。

この世界の原理はよく分からないけど、何か運命的なもの感じちゃってたりする！？この人とは赤い糸で結ばれている…みたいな直感！？そういうこと！？


A｢ねえ、どっち？｣

及川｢な、無いよ！無い！｣


まだ、だけど。正確には。

…そっか。そうだよね。
俺の答えに、Aちゃんは残念そうにぽつりと呟いた。


A｢変なこと言ってごめん｣


いっ、言いたい〜〜〜！！

キミは今から三年後に俺と出逢って結ばれるんだよ☆
結婚して、可愛い子供もできて、海外で家族三人幸せに暮らすんだ☆
つまり俺は、未来から来たキミの旦那さんってこと☆

…って、言いたい〜〜〜！！


A｢よく分かんないんだけど、何かそんな気がしちゃって…おじさんと話してると、私すごく安心して……｣


言葉の途中、Aちゃんは苦しげに短く息を洩らした。次の瞬間ーー、

ぽろり。Aちゃんの瞳から、一筋の涙が溢れ出した。

桜の下で待ち合わせよう９→←桜の下で待ち合わせよう７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す