【及川徹】0キロメートルの愛 2nd【番外編】

太陽のふるさと１８ ページ28

全員の視線が私に注がれる。隣に座っている徹は、私の顔を見つめると、とろけるようにしてその頬を緩ませた。


及川｢Aちゃんはすぐ照れるんだから…｣

A｢ちちちちげーよ！！バーベキューの火が顔に燃え移っただけだよ！！｣

岩泉｢大惨事じゃねぇか｣

花巻｢このババア完全に照れてんな｣

松川｢無駄な嘘ついてババアが照れてる｣

A｢ババアババア言うなジジイ共が！！｣

真夜｢……チッ｣


真夜ちゃんは舌打ちを打つと、網にくっついたコゲをトングでかき集めて徹のお皿によそう。それから、別のお皿に避けておいたお肉をレイの目の前に置いた。


及川｢ちょっ、真夜ちゃん？俺の皿はゴミ箱じゃないよ？｣

真夜｢レイくん、このお肉ふーふーしてあるから熱くないよ｣

レイ｢ありがとう！｣

及川｢無視！？｣

花巻｢ふーふー…｣


花巻が真夜ちゃんの言葉を繰り返して、鼻先で小馬鹿にしたように笑う。


真夜｢何笑ってるんですか？そのピンク髪燃やして漢方薬にしますよ？｣

花巻｢コワ。医師免許剥奪案件、｣

レイ｢ーーねぇ、ママ！オレ、真夜ちゃんとケッコンする！｣


しいん、と。息子の唐突なひと言で、辺りは音をすべて持ち去られたように静かになった。


A｢え…？レイ…？｣

レイ｢オレ、真夜ちゃんと結婚する｣

国見｢は？｣


国見ちゃんが間の抜けた声を漏らす。

レイは真っ直ぐと曇りなき純粋な眼で私を見つめていた。息子は本気だった。

……え。レイって……え？？


及川｢はー…やっぱりなぁ…｣

A｢え？やっぱりって？｣

及川｢今朝言ったでしょ｣


徹の言葉に首を傾げながら今朝のことを思い返す。


ーー“…ねぇ、レイに言った方がいいんじゃないかな？“



“真夜ちゃんには旦那さんいるんだよって“




…あの後、徹はレイに叩き起されて言葉は途切れたけどーー、


A｢マジか…ガチ恋だったのかよレイ…｣

及川｢鈍いんだよ、Aちゃんは｣

A｢真夜ちゃんに惚れるとは…やだ、レイったら見る目あるわぁ｣

及川｢感心してる場合じゃないでしょ。どうするのさ？ショック受けるよ…レイ｣

A｢いいじゃん。“かわいい子には旅をさせよ”って言うでしょ｣

及川｢いや、言うけどさぁ…｣

真夜｢……レイくん、あのね｣


心配そうにレイの様子を窺う徹と話していると、真夜ちゃんが優しい声で息子に声をかけた。


真夜｢ごめんね。私、もう結婚してるの｣

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