しんどい時は ページ9
私は何のためにここを歩いているんだろう。
と、バイト後の帰り道、ふと思った。
日に日に自分を忘れて行く。
青城を卒業して、上京してきて語学の勉強をして、私はこの二年間、何を必死に追い求めてきたんだろう。
目的が無くなった。
ここにいる理由がない。
いつだって夢の続きをくれたのは徹だけだった。
モブ｢見て見てー雪ー｣
近くを歩いていた人の声に反応して同じように空を見上げると、グレー色の空からはらはらと白い雪が降り始めていた。
A｢…初雪｣
嬉しくも何ともなくて、空と同じグレー色のマフラーに顔を埋める。
…徹。
日本にも冬がやってきたよ。
数ヶ月前、アルゼンチンの冬を徹と過ごした。
あの時は全然寒さなんて感じなかったのに、日本の…徹のいない冬は凍てつくみたいで、寒すぎる。
一人の部屋に帰るのが辛くて、近くのベンチに腰を下ろす。
降ってくる雪と、クリスマスシーズンでチカチカと点滅するイルミネーションをぼーっと見つめていた。
…今年は色々なことがあった。
黒尾と出会って、友達になって、失って。
徹と擦れ違って、喧嘩して、別れて。
徹が注いでくれた暖かい愛情も、黒尾が感じさせてくれた深い安堵も、もう戻らない。
足を止める。
涙が溢れそうになって、上を向いた。
鼻がつんとしてくる。
寒さから来るものだけじゃない。
苦しくて、寂しくて。
ーー私はどこへ行けばいいの？
岩泉｢A｣
名前を呼ばれてゆるゆると顔を向けるとそこには、スーパーの袋を手にこっちに歩いてくる岩泉の姿があった。
岩泉｢丁度良かった。今からお前の家行こうとしてたから｣
岩泉は、鍋食おーぜ、と食材の詰まったスーパーの袋をチラつかせる。
徹と別れてからこうして岩泉は私に会いに来てくれる。
勉強もバイトもあって忙しいくせに。
じわじわと泣きそうになっているのを堪えていると、岩泉はそれを分かってか、私の頭に手を伸ばしてぐしゃぐしゃと撫で回してきた。
岩泉｢しんどい時はとりあえず家に帰って、うめーもん食って、風呂入って、あったかくして寝る｣
ほら行くぞ、と岩泉は迷わず私の手を取って歩き出す。
男らしく頼もしい岩泉の背中に驚くほど自然に涙が溢れ出てきて、歪む視界の中、岩泉に手を引かれるままにイルミネーションで彩られた夜の東京を歩いた。
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高！及川最高！後輩ちゃん最高！！素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (
レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは！コメントありがとうございます！超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです！ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…？是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スナック杏月 | 作成日時：2021年8月18日 9時
