18000キロメートルの距離 ページ49
宮｢なぁ、連絡先教えてや｣
これで何度目になるんだろう。
先日練習風景を見に行った時に挨拶を交わした瞬間、アンタの笑った顔ええなぁ、と私に言い放った宮 侑はどれだけ断ろうが折れない。
A｢…だってさ、日向くん｣
日向｢エッ！？｣
宮｢何でやねん！アンタのやアンタの｣
A｢…分かりました。110です｣
宮｢それ警察やん！｣
宮さんがそう言った瞬間、数メートル先、こっちに歩いてくるその姿を見つけて、しつこく私に絡む宮さんの声は耳に届かなくなった。
向こうも私に気がつき、パッと表情を明るくさせる。
声を掛けたいところだが仕事中だ。
お互いニコリと微笑むだけで、擦れ違おうとしたその時、
宮｢なー、メシ行こや。メシ｣
再び隣を歩く宮さんの声が耳に舞い戻ってきた。
ピシャリと断ろうとしたその時、グイッと腕を引かれたかと思うと、私の唇は馴染みある徹の唇によって塞がされていた。
周りが水を打ったように静まり返る中、チュッとリップ音を立てて徹は唇を離すと、声を張り上げる。
及川｢俺の嫁さんだから！！｣
フン、と鼻を鳴らす徹に、その場にいて一部始終を見ていた人達は固まる。
痛い程の視線を感じながら、ハンカチを取り出して徹の唇に付いたグロスリップを優しく拭い取った。
A｢徹、私仕事中｣
及川｢あ、ハイ…｣
A｢ちゃんと断れるし｣
及川｢…うん｣
A｢今日は夕飯一緒に食べよ｣
及川｢うん！！｣
しょんぼりと縮こまったかと思えば、ちぎれんばかりにしっぽを振る犬のような徹に、ふっと笑みが零れた。
ホント、私の旦那はこういうところが可愛い。
徹と別れ、記者会見が始まる部屋へと足を踏み入れる。
大勢の人目とカメラを前にすると、自分を落ち着けるように息をついた。
18000キロメートルの距離が教えてくれた。
悩みや不安から目を逸らさず向き合うことの大変さ。
そしてその先にあった、徹の隣にいられるという幸せを。
楽しいことなんかほとんどなかった。
寂しくて辛くて苦しくて、我慢の連続だった。
でも、それを乗り越えた私達の絆はけっして揺るがない。
A『通訳担当の及川です』
あの日々、“及川”と呼んでいた私が今、それを名乗っている。
それがどれだけ嬉しくて誇りに思うことか。
徹。私、貴方に恋をしてよかった。
私と徹のこれから。
未来を重ねていけますように。
ーーそう願いながら、選び、掴み取ったこの幸せの中で今日も生きていく。
(END)
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高！及川最高！後輩ちゃん最高！！素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (
レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは！コメントありがとうございます！超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです！ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…？是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スナック杏月 | 作成日時：2021年8月18日 9時
