妻です ページ48
空いている時間に、日本代表チームが練習を行っている体育館に足を向ける。
中を覗き込むと、真っ先に見つけたのはトレーナーとしてそこに立つ岩泉の姿だった。
A「岩泉」
嬉しさに駆け寄って抱き締めたい衝動に駆られるが、ダメだ仕事中だと堪えて、大人しく岩泉のそばまで歩み寄ると、ふっと笑われた。
岩泉「なに今更遠慮してんだよ」
言うなり、岩泉は私の頭を抱き寄せると、何度も支えられたその懐かしい胸に押し付けた。
岩泉「ここまでよく来たな」
その一言に岩泉の私を想う気持ちがぎゅっと詰まっていて、胸が暖かくなる。
岩泉「いよいよだな」
そうだね、と息をつくと、岩泉が身体を離して、バシィイン!と背中を思いっきり痛いくらいに叩いてきた。
岩泉「背筋曲がってんぞ、胸張れ」
A「…うん。ありが、」
日向「あっ!大王様の彼女!」
え?何?と思って振り向くと、そこには見覚えのあるオレンジ色の髪をした日本代表、日向くんが私を思いっきり指さしていた。
そのそばには首を傾げる影山くんの姿もある。
影山「違うだろ。あの人の彼女はもっと見た目がやば……、この人だわ」
A「今やばいって言いかけてたよね?」
宮城の春高予選の会場で一度だけぶつかって会話しただけなのにも関わらずよく覚えてるなぁ。
…あ、隣に徹いたからか。それでか。
A「あ、ちなみに彼女じゃなく妻です」
左手の結婚指輪を見せつけると、日向くんと影山くんは、ツ、ツマ…とカタコトに呟いていて、おかしくて笑った。
監督「関係者の方かな?」
はっとして顔を向けると、そこには事前情報として把握済みのここにいる日本代表の選手を率いる監督の姿があって、私は背筋をピシリと伸ばした。
A「通訳を担当させて頂きます、及川Aです。本日は練習風景を見学させて頂きたくお邪魔させて貰いました」
監督「キミか!まだ若いのに腕がいい通訳さんって聞いてるよ」
A「恐縮です。まだまだ勉強中の身です」
監督「いやいや、その若さでオリンピックの通訳ができるなんてすごいよ。特別な勉強でもしてきたのかな?」
聞かれて、少し頭を悩ませる。
特別な勉強なんて特に何もなく、地道な努力の積み重ねだったけど、でも…強いて言うなら、
A「…私と今まで出逢って、今ここにいる私を作ってくれた全ての人の愛の力です」
私の言葉に監督はぷっと吹き出して、面白いことを言うなぁ!と声高らかに笑っていた。
249人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時