貴方のところへ帰るから ページ43
今朝は、朝日が登るのを二人、肌を寄せ合って感じていた。
一睡もしていない私は、同じくもったいないからと意地でも眠らなかった徹と、同時に大きくあくびをかました。
岩泉｢お前ら寝てねーのか？｣
人の行き交う空港。
徹を見送りに来た岩泉はそう尋ねて首を傾げた。
及川｢やだなぁ…聞くなんて野暮だよ岩ちゃん。そんなんだからモテないんだよ｣
岩泉は少しの間きょとんとしていたが、その意味理解したようで顔を赤くさせると、うるせぇボゲェ！！と徹をしばき倒していた。
このやりとりを見るのもしばらくお預けだ。
A｢ね、行ってらっしゃいって言って｣
空港の搭乗ゲート前。
遂にやってきた別れを前に、私はそう言った。
徹と岩泉が同時に首を傾げる。
及川｢逆じゃないの？｣
A｢だって、私の帰るところは徹のいるところだから｣
そう言って微笑むと、徹は私の手を引いて強く抱き寄せた。
及川｢行ってらっしゃい｣
A｢行ってきます、徹｣
徹の胸に擦り寄っていると、ふと身体を離された。
及川｢あ、忘れ物｣
徹は軽いトーンでそう言うと、両手で私の頬を挟み、ちゅっと唇にキスを落とした。
すぐ離された唇が寂しくて、もう一回、と瞳を伏せてねだれば、キスの雨が降ってきた。
岩泉｢おい。お前ら…海外じゃねぇんだぞここは…｣
岩泉が、勘弁しろよ、と大きくため息を吐き出しながら額に手をやる。
その姿にふっと笑ってしまいながらも周りの目なんて一切構うことなく、徹と視線を絡ませてはキスを繰り返した。
A｢…徹、そろそろ｣
及川｢ん…｣
愛してる、という甘い響きとキスを落として、徹は名残惜しそうに私から離れる。
行かないでなんてもう思わないから、言わないから。だから。
ーー行って、徹。
必ず追いついてみせるから。
泣きながら、でも笑いながらまた私達は離れ離れになった。
春のような暖かな人。
徹は私の凍った心を優しく溶かし、掬いあげて、また遥か遠い距離を超えたあの場所へと旅立って行った。
岩泉｢大丈夫か？｣
A｢…うん、大丈夫だよ岩泉｣
気遣うように私の顔を覗き込む岩泉に頷いて微笑んだ。
私達はこれから先も躓いたり立ち止まったりそんなことの繰り返しだ。
それでもその先にある徹としか見られない景色を見に行きたい。
飛行機を見送って、涙を拭いた。
行く。必ず。
徹のところへ帰るんだ。
強い足取りで、輝き出した未来へと足を踏み出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 249人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高！及川最高！後輩ちゃん最高！！素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (
レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは！コメントありがとうございます！超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです！ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…？是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スナック杏月 | 作成日時：2021年8月18日 9時
