噛み締めてりゃいい ページ38
A「それでぇー、とーるったら子鹿みたいに足がぶるっぶるふるえててぇー」
及川「もー言わなくていいの!」
夜の居酒屋。
お酒を飲み交わしながら、先日私の両親に挨拶をした時の徹のことを話すと、花巻と松川はゲラゲラと笑った。
零すぞ、という声と共にテーブルを挟んだ真向かいから手が伸びてきて、私の肘のそばにあったお酒の入ったグラスが遠ざけられる。
慣れたような岩泉のその動作に、思わずへにゃりと笑った。
A「ありがとぉママ」
岩泉「ママじゃねーよ」
及川「お母ちゃん、お醤油取って」
岩泉「うるせぇ自分で取れ」
A「取ったげるー」
覚束無い手を醤油差しに伸ばそうとすると、ああもう危ねーな、という声と共に、先程グラスを遠ざけた岩泉の手が醤油差しをさらっていくと、それを徹の前にトンと置いた。
及川「ありがとぉ、お母ちゃん」
A「ちょっとぉ…いわいずみは私のママなんですけどぉ?」
及川「え?おれのおかーちゃんだよ?」
松川「なに岩泉の取り合いしてんのお前ら」
花巻「モテる男は大変だな」
岩泉「こいつらにモテても嬉しくねーよ」
A「こいつらとはなんだ!!」
及川「そーだそーだ!うれしいくせにぃ!」
A「照れてんのかぁ!?ああん!?」
岩泉「…こいつら外に放り出してくるか」
人でなし!と声をあげる徹の顔面に、岩泉はテーブル上のおしぼりをぶつける。高校の頃に戻ったような懐かしいやりとりが見れて嬉しくて、幸せな気持ちでいっぱいになった。
左手の薬指、キラリと光る婚約指輪をなぞる。
A「まーだ信じらんないなぁ…」
花巻「…何が?」
A「なんかぜんぶね、夢なんじゃないのかなーって、ちょっとふあんになる」
松川「次から次に大変だねぇ」
A「…ニンゲン幸せすぎるとオクビョーになるんですぅ」
子供みたいに膨れっ面を浮かべていると、ドンッ!と目の前に飲み干して空になったグラスを叩き付けるように置いた岩泉が、バッカだなぁ、と零した。
岩泉「余計な心配してねーで今は噛み締めてりゃいーんだよ」
A「……そっかぁ、そうだねぇ」
こてん、と徹の肩に、幸せでいっぱいの身体を預けた。
また例え苦しい試練が私達を待ち受けていたとしても、今は手を伸ばして徹を抱き締めよう。
一生をかけてお互いを愛することを誓ったから。
アルコールで襲ってきた眠気に瞳を閉じる。
大好きなみんなの騒がしい声を聴きながら、意識を夢の中へと沈めた。
249人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時