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遅くなってごめんね ページ31

ずっとずっと会いたくて堪らなかった。
顔が見たかった。声が聞きたかった。触れたかった。
こうしてもう一度抱き締めて欲しかった。


及川「…危ないよ、もう」


私を抱き締める力を少しも緩めずに、徹が子供にたしなめるみたいにそう言った。


A「ここ…一人で飛び降りれたら、徹に会いに行こうと思って」

及川「…そんな危ない願がけしないの。雪が柔らかかったから良かったけど…」

A「うん。ごめん。…でも、会えた」


言いながら徹の暖かい胸に擦り寄れば、
ああもう。どうしてそんな可愛いこと言うかな。
と徹は余裕無さそうに声を漏らした。

ふと身体を離される。
徹の、色素の薄い綺麗な瞳には涙が光っていた。


及川「大好きだよ、Aちゃん」

A「…私も」


徹の顔が近付いてきて、そっと目を伏せた。

遠慮がちにそっと触れるような優しいキスに、嬉しくて、幸せで、どうしようもなく満たされていく。

何度もほんの少し離れては重ねてを繰り返される甘いキスに頭が酔いそうになる。

ああもう。この温もり以外には他に何も要らない。


A「…ふふ、徹泣いてる」


長いキスの後、徹の顔を見ると頬に涙が伝っていて、思わず笑い声を漏らす。


及川「Aちゃんだって泣いてるし…目真っ赤…」

A「誰かさんのせいでね」


うっ、と言葉を詰まらせる徹にくすりと笑って、再び徹の胸に擦り寄る。
すぐに徹の腕が私の背に回され、強く抱き締められた。

私達はそのままぴったりと抱き合って二人でぐずぐずと涙を零す。
お互いの存在とその温もりがここにあることを確かめるように、触れて、名前を呼び合っていた。


及川「…ごめん、ごめんね。たくさん不安にさせちゃったよね。疲れさせちゃったよね」


ふるふると首を横に振る。

そんなのお互い様だ。
私達はお互いに傷つけ合っていた。

その優しい声の温度から、腕に込められた力から、私を想う徹の気持ちが伝わってくる。

この温もりは永遠じゃないかもしれない。
また失ってしまうかもしれない。

私達を渦巻く問題は何も解決はしていないけど、今は何も考えないで、ここにいる徹を抱き締めていよう。


A「徹…」

及川「ん?」

A「会いに来てくれて…ありがとう」

及川「…ううん、遅くなってごめんね」


徹が大きな手で私の頭を撫でる。
心地良さに目を閉じた。


A「…そんなに何回も謝んないでよ」


ここに徹がいる。それだけでもういいから。

約束してほしい→←天国にするか地獄にするか



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設定タグ:ハイキュー , 及川 , 黒尾   
作品ジャンル:アニメ
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時

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