あけましておめでとうは言わないで ページ26
岩泉「…何…、してんだよ、お前は…、」
雪の上で仰向けに寝転んでいた私の視界に入り込んできた岩泉は真冬の夜だというのに汗だくになっていた。
A「…スノーエンジェル」
適当に答えながら、腕を上下に動かして脚を開閉させて天使形の跡を作ると、岩泉は呆れたように白い息を吐き出した。
岩泉「…ったく、焦って探し回っただろーが」
岩泉は雪まみれの私の手を掴むと、強い力で雪から引き上げた。
岩泉が私の身体にくっ付いた雪を少々痛いくらいの力でパンパンと叩き払ってくれていると、
花巻「あ、いたー」
松川「こんなとこにいたのかお前」
同じく私を探していたと見える花巻と松川がほっとした表情を浮かべながらこっちに歩いてきた。
岩泉「おい。こいつから目離すなって言っただろ」
花巻「だってこいつ一瞬でどっか消えたんだもん」
岩泉「そーだよ。今のこいつからは一瞬足りとも目ぇ離しちゃいけねーんだよ」
松川「…東京で一人で面倒見て大変だったろ、岩泉」
岩泉「同情すんなら俺いない間はちゃんと見てろ」
寒さにぶるりと身体を震わせ、グレーのマフラーに顔を埋めていると、急に大きな手に手を取られた。
松川だった。
寒さで感覚を失って真っ赤になったそこに大きな男物の黒い手袋が覆われた。
松川の手によって、自分の指の一本一本が手袋へと丁寧に通されていく。何も言わずに。
それを見た花巻が自分もと被っていたニットの帽子を取って、私の頭に被せた。
似合ってねーな、と意地悪く笑いながら。
A「…何、そのイケメン行動…」
普段軽口叩きまくってくるくせして、こいつら。
ホットケーキに載せたバターが溶けるように、一瞬でふわーっと溢れた涙を、慣れたように岩泉が指先で拭いとっていく。
胸が暖かい。ぽかぽかと温まっていく。
…なのに、どうしても、心の奥はずっと凍えたままで、そこに熱は戻っては来ない。
俯き下唇を噛んで涙をぼろぼろと零していると、岩泉が私の頭を胸に引き寄せる。
岩泉「大丈夫、大丈夫だ。今はしんどいけど、もう少しの辛抱だ」
A「いわいずみ…?」
岩泉「目ぇ瞑って、もう少し耐え抜けば戻って来っから」
耐え抜く?いつまで?
戻ってくるって何が?
A「なに…言ってんのか、分かんないよ…」
ーー私達のいる大晦日の神社。
カウントダウンが始まる。
走馬灯のように徹との過ごした日々が頭を駆け巡る。
誰よりも男らしい親友の胸を借りながら、新しい年を迎えた。
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時