検索窓
今日:32 hit、昨日:0 hit、合計:74,295 hit

手出していいのは俺だけ ページ3

先輩「休んで行こっか」


しばらく私の手を引いていた先輩がふと足を止めて、煌びやかな建物を指さした。


A「ん…?」


ここ知ってる。入ったことは一度もないけど。
何だっけ?えーっと…えーっと。あ、


A「らぶほ…?」

先輩「そー。可愛い後輩が彼氏と別れてしんどそーだったから」


先輩が顔をニヤつかせて、するりと私の頬を撫でた。

アルコールのせいで頭が回らなくて、ふわふわする。
先輩が何を言ってるのかがよく分からない。


先輩「キモチーことして元カレのこと忘れよ?ね?」

A「わす、れる…?」


自分の声が酷く引き攣っていた。

…徹を?

暖かな微笑みを?優しいあの手を?
柔らかく耳に響いていた声を?
私に掛けてくれた言葉を?


ーー“…さよならしよう”


アルゼンチンの国際空港。
最後に、愛おしむように重ねられた優しいキスを思い出す。

胸がギシギシと軋む。
痛くて、苦しい。

つうっと頬に涙が、一筋伝った。


先輩「だいじょーぶ。俺に任せて」


建物の入り口へと手を引かれ、足を踏み入れようとしたその時、


黒尾「何…っ、してんだ…バカ、」


反対の手を掴まれる感覚。

振り向くと、そこには息を切らし、必死な顔をさせて私の手を掴む黒尾の姿があった。

何でここに?と上手く回らない舌で尋ねようとすると、黒尾は先輩の手を私から引き剥がす。
そして私を守るようにして、私と先輩の間に割って入った。


黒尾「お前誰?こいつの何?」

先輩「…同じサークルの先輩だけど」


黒尾は私に背を向けていてどんな顔をしているのかは分からないけれど、基本おちゃらけている先輩の顔は酷く引きつっていて、初めて見る顔だった。


黒尾「こいつに何しようとした?」

先輩「疲れてるから休ませようと、」

黒尾「ここで休ませる必要あるか?ねーよなぁ…?」


疑問符がついてるはずなのに断定的な黒尾のそのトーンに、先輩はびくりと肩を揺らした。


黒尾「こいつに手出していいのは俺だけだから」


身長の高い黒尾に見下ろされた先輩が気圧されたように一歩、後ずさる。
そして先輩は私に、お前新しい彼氏できたんなら言えよ!と最後に言い残し、そそくさと逃げるようにして退散して行った。

小さくなっていく先輩の背中をぼーっと見つめていると、不意打ちでペシンと頭を叩かれる。


黒尾「何連れ込まれそうになってんだよ」


黒尾は余裕無さそうに自分の髪をくしゃりと掻き集めて、このバカ女、と零した。

粉砕骨折した→←おいで



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (132 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
249人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 及川 , 黒尾   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。