俺は俺らしく ページ19
▲▼花巻 side
小腹が減ってコンビニに行った帰り、歩道橋の階段を上っていると、見知った人物をそこに見つける。
歩道橋のど真ん中、空を見上げるAの頬には涙が伝っていて、親しい仲なのに声を掛けるのを一瞬躊躇う程にAは痛々しい姿をしていた。
花巻「なーにしてんの?」
ゆるゆるとこっちを振り向いたAが瞳を瞬く。
その瞬間に睫毛に乗っかった涙が弾かれて飛んだ。
A「花巻…」
花巻「顔真っ赤。どんだけ外いたの?」
手の甲で涙を拭うと、虚ろな目で再び夜空を見上げながら、分からないとAは答える。
見る影もないな、と思った。
バカみたいに大口開けて笑っていた明るいこいつはどこに行ったんだ?
花巻「風邪引くぞ。早く帰れよ」
A「…ちょっと家帰りたくなくて」
花巻「何?喧嘩?」
尋ねるとAは苦い顔を浮かべて、
あのね、お父さんに言われちゃったんだ。
そう切り出して、父親に言われたことを俺に打ち明けた。
私達は本気だった。お互い唯一無二だって疑わなかった。
この先もずっと一緒にいる未来を真剣に考えていた。
泣きながら、力なく薄っぺらい笑顔を浮かべるAに胸がぎゅっと痛む。
先月に岩泉から、及川とAが別れたんだと聞いた時は、一体何の冗談なんだよと思ったし、実際に今日Aの顔を見るまで現実味が湧かなかった。
ーーまさかこんな日が本当に来るとは。
どんな顔をしたらいいか、何て言葉を掛けていいか分からなかった。
どんな時もAは真っ直ぐで、転んでも必ず立ち上がってた。
前だけを向いてくこいつの姿に俺達はどれだけの力を貰ってきたんだろう。
…改めて岩泉はすごいやつだと思う。
こんな抜け殻みたいなAが潰れないように支えてここまで引っ張ってきた。
俺は岩泉のようにはできないし、かと言って大人な松川のように静観することもしたくない。
花巻「帰りたくねーなら遊び行く?」
A「へ…?」
花巻「カラオケ行こーぜ」
だったら俺は俺らしくこいつに寄り添おう。
その顔に及川が惚れた笑顔が戻ることがなくても、これが今俺にできる最善だと思おう。
花巻「採点の点数低い方の奢りな」
手を引くでもなく、慰めるでもなく、軽口を叩いて笑う、変わらないいつもの俺でAの隣にいよう。
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時