歯がゆい ページ16
▲▼岩泉 side
A「おはよう」
岩泉「…おう」
待ち合わせた駅前、キャリーケースを転がしてやって来たAの目はパンパンに腫れ上がっていて、痛々しかった。
…こりゃまた今日はひでーな。
ホントに最近のこいつは見てらんねぇ。
大きくため息を吐き出すとAの手をひっ掴んで歩き出した。
改札をくぐり、ホームにやって来た新幹線に乗り込む。
Aは相変わらず心ここにあらずの様子で、ぼーっと窓の外を流れる景色を見つめていた。
こんな状態のAを見ているといつも思う。
俺はこいつのことちゃんと支えてやれてんのか、と。
よく時間が解決してくれる、とか言うけど、Aはそういう域にいねー気がする。
A「…ねぇ、岩泉」
ふと、Aが俺の肩に頭を預けて寄りかかってきた。
A「岩泉はさ、最初から気付いてたんだね」
岩泉「…何をだ?」
A「黒尾が私のこと好きだってこと…だから岩泉は私にずっと警告してたんだね」
ーー“なぁ、クリスマスあいつと過ごしたいから邪魔しないでくんねー?…もう、終わらせるから“
帰国してからのAがあまりにも心配で、お互いにあいつから目を離さないようにしようと、黒尾とは連絡先を交換していた。
そんな黒尾から初めて連絡が来たのはイヴの前日だった。
電話口の黒尾の声にいつものふざけた調子は無く、まるで全てを悟ったような静かで穏やかな声をしていた。
ーーそうか。
黒尾は、“終わらせた”のか。
A「…私ってどうしようもなくバカだね」
全然気づかなかったんだ、と涙ぐむAの肩を抱き寄せる。
岩泉「お前は悪くねーよ」
どこか掴んでいないと、深いところまで落ちて戻って来れなくなるんじゃねーかと不安だった。
それぐらい今のAは頼りなく、底抜けに暗い。
岩泉「誰も悪くなんかねぇんだよ」
…だから、歯がゆい。
こいつに何をしてやればいいか分からねぇ。
俺はこうやってこいつが崩れ落ちてしまわないように食い止めることぐらいしかしてやれねぇ。
分かってる。
あいつじゃないと無理だ、と。
岩ちゃん任せたよ、じゃねぇんだよクソが。今すぐ飛んできてこいつのこと抱き締めてやれよ。
苛立って、舌打ちを一つ零す。
ーーこの帰省で少しでもAが元気を取り戻せるいい。
そう強く想いながら、今日もぼろぼろと涙を流すAを抱き締めていた。
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時