夢よ二度と覚めないで ページ1
徹の夢ばかり見てしまう。
夢の中はいつも暖かくて、二度と覚めないでほしいっていつも思う。
目が覚めると外はもう暗くなっていた。
身体を起こすと、机に伏せて寝ていたせいで背中が軋んだように痛んだ。
最近寝つきが悪く寝不足なこともあり、レポートを書きながら寝落ちしていたらしい。
一人の部屋には、しまい込むことも、捨てることもできずに飾られたままの徹の青城の時の練習着と、あの日壊れたレジンのヘアゴムが存在感を放っていて、胸が苦しくなった。
ーー夢と現実のギャップ。
A「ふっ…、う…、」
自動でスリープになったパソコンのキーボードの上にポタポタと雨を降らせた。
私は今日も一人、大好きな元彼を想って涙を流す。
寂しい。苦しい。虚しい。
私はあとどれだけ泣けばいいんだろう。
ぽっかりと空いた心の穴が埋まる日は来るんだろうか。
頬に伝う涙を手の甲でぐいっと拭うと、ふらりと立ち上がってベランダへと出た。
午後6時、夜の帳が下りた空を見上げる。
西の空には宵の明星、金星が輝いていた。
アルゼンチンは今、午前6時。
徹はもう起きてきたかな。
あのベッドから一人で起きて、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べて、支度をして家を出る徹を思い浮かべた。
そっちはもう暖かいよね。
あのハカランダの木は満開になったかな。
ーー“いつか一緒に満開になってるところ見に来ようね“
…見たかった、一緒に。
手を繋いで薄紫色の花が咲きほこる並木を一緒に歩きたかった。
▲▼
先輩「元気ないなぁ、お前」
あちこちから笑い声が響き渡る居酒屋。
何となくでやって来た英会話サークルの飲み会でボーっとしていると、いつの間にか私の隣に先輩が座っていた。
先輩「どーした?例のブラジルにいる彼氏と喧嘩?」
A「…アルゼンチンって何回も言ってるじゃないですか」
先輩「同じ南米じゃん」
A「大陸で括らないでください」
ため息を一つ零して手の中のグラスに口を付ける。
中の氷は溶けきっていて、ソフトドリンクの味は薄くなっていた。
A「…別れたんですよね」
ぽつりと言うと、先輩が少し驚いたような顔をして私を見つめた。
先輩「え?何?浮気でもされた?やっぱり男ってヤれないと溜まるもんも溜まって他の女に走っちゃうもんなぁ」
A「…そんなんだからヤリチンって言われるんですよ」
言わなければ良かった、と後悔しながら目の前の枝豆に手を伸ばした。
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於音###(プロフ) - 最高でした。泣きました。笑いました。秒で読んでしまいました。青城最高!及川最高!後輩ちゃん最高!!素晴らしい作品をありがとうございました🥰🥰 (2月29日 1時) (レス) @page49 id: 44bf006712 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - あめさん» あめさんこんばんは!コメントありがとうございます!超絶長編作品を最後まで読んで頂くどころか泣いてくれるなんて…バチクソ嬉しいです🥺番外編についてですが、そろそろ鍵を外す予定でしたので、先程全体公開の方させて頂きました。確認お願いします。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
あめ - とても面白かったです!ちょっと泣いちゃいました…((続編のパスワードってなんですか…?是非読ませていただきたいのですが… (2022年3月19日 20時) (レス) @page50 id: aca36a2c7b (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - 善さん» 善さんコメントありがとうございます☺️good boyに思わずワロてしまいましたwwそして、親戚の犬の褒め方がgood boyだったなと懐かしくなりました。 (2022年2月24日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 諦めない侑に、good boy (2022年2月24日 19時) (レス) @page49 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スナック杏月 | 作成日時:2021年8月18日 9時