物分りのいい彼女の皮 ページ30
…どうして、このタイミングで。
いっそのこと顔を覆って泣き喚いてしまいたかった。
ふざけんな、バカ。
最後の夜、残された時間を惜しむように二人で過ごしていると、チャイムが鳴った。
徹がドアを開けるとそこには、ぼろぼろと涙を流すエマの姿があった。
エマは開口一番に、遠距離恋愛中の彼氏と別れたんだと打ち明けた。
エマ｢うっ…ふっ、｣
私の目の前には綺麗な顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくるエマ。
そしてそんなエマを背中を摩ってあげる徹。
爪先まで冷えていくような感覚に耐えきれなくなって、私はソファから立ち上がった。
A｢…私、ちょっと外出てくる｣
及川｢えっ、でももう遅いから…｣
A｢大丈夫。玄関先までだから。…私外した方がいいでしょ？｣
こんなにも腸が煮えくり返っているのに、笑顔を浮かべられる自分が女優にでもなれるんじゃないかと思った。
本当に申し訳なさそうにごめんねと言った徹の顔を引っぱたいてやりたい気持ちになる。
A｢大丈夫だから｣
不安げに私を見つめる徹にそう言う。
嫌いだった中学の頃の自分を思い出す。
八方美人の良い子ちゃんの私が、今ここになって出てくるなんて。
“物分りのいい彼女“の皮を被った私は、パーカーをサッと羽織ると、一人外へ出た。
…息が詰まりそうだ。
玄関先、段差になっているところで座り込み、夜空を見上げた。
…あーあ、何してんだろ、私。
バカじゃないのか。
ムカつくと苦しいが胸の中を行ったり来たりしていた。
A｢…黒尾｣
助けを求めるように呟いた名前は、親友の岩泉でもなく、私をずっと見てきた真夜ちゃんでもなく、黒尾で、その事に少し戸惑った。
▲▼
しばらくしてそっと部屋に戻ると、エマの泣き声はもう聞こえなくて、やけに静かだった。
もう落ち着いたのかな、と廊下を抜けてリビングを覗き込んだその時だった。
エマ｢《徹が彼氏だったらよかったのに》｣
バケツいっぱいの氷水を掛けられたように体が一気に冷えた気がした。
エマが、徹に寄りかかっていた。
ぐるぐると不安が頭を駆け巡り、呼吸が浅くなる。
それを整えるために、今にもその場に蹲ってしまいたかった。
ショックなはずなのに涙が流れるわけでもなく、ただただその場に立ち尽くしていた。
…徹、お願い。
早くその女を引き離してよ。
私本当は大丈夫なんかじゃない。
ずっと、我慢してんだよ。
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杏月(プロフ) - しゅが〜さん» ずっと書きたかったシーンへと着々とフラグを立てていっております。是非たくさん妄想しまくって楽しみにして頂けるとバチクソに嬉しいです！いつも嬉しいコメントありがとうございます！ (2021年8月18日 9時) (
レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - ミキさん» 三角関係を書くのは楽しいですが少々心苦しいです…。岩ちゃんみたいな友達いたらそっちに揺らぎそうですよね。作者だったら岩ちゃんルート入りますね！最後はハッピーエンドを迎えられるように書いて行きたいと思っております！コメントありがとうございました！ (2021年8月18日 9時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
しゅが〜 - クリスマス､､､！何か起こるかな､､､。うわぁ〜楽しみ過ぎますね！及川さんと何かあるのか、クロと何かあるのか､､､もしかしたら何も起こらないかもしれない､､､。勝手に一人で想像して楽しんでますw (2021年8月17日 23時) (レス) id: 8796ade977 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - 及川さんもクロもどっちにも幸せになって欲しい…あと岩ちゃんみたいなお友達私も欲しいです。アルゼンチンに行ってやっと会えたのにすれ違ってしまって…なんだか切なくなります(..)とても面白いです！更新楽しみにしています！！ (2021年8月17日 21時) (レス) id: bc172cdec5 (このIDを非表示/違反報告)
杏月(プロフ) - いちごミルクさん» 神だなんて恐れ多すぎます…！人たらし及川さんと食えない黒尾くんと鈍感夢主ちゃんの三角関係がどうなって行くか是非見届けて頂けると嬉しいです！励みになるコメントありがとうございます！ (2021年8月17日 19時) (レス) id: 04a827e35d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スナック杏月 | 作成日時：2021年8月3日 13時
