【及川徹落ち】18000キロメートルの恋 2nd【黒尾鉄朗】

どうか離れないでいて ページ44

▲▼及川 side


モヤモヤする。
嫉妬心が心の底から湧き上がる。

嫉妬心を持つのは良くないって頭では分かってる。
でも、一度不安が芽生えると成長を止められない。

きっと…いや、絶対黒尾くんはAちゃんに気がある。

じゃなきゃ水族館でデートとかしない、フツーは。
だって水族館とか定番のデートスポットじゃん。


A『チンアナゴいたよ！徹も可愛いって言ってたニョロニョロの！仙台の水族館にもいたよね！』

及川｢うん、いたね。Aちゃんチンアナゴの水槽からずっと離れなかったよね｣


苛立っているのを悟られまいと笑って返す。

Aちゃんは向けられている好意に気がついていない。

思い返すと高校の頃からそうだった。
俺の好意にちっとも気が付かなかったくらい鈍かった。
黒尾くんとは、きっと岩ちゃん達と一緒にいるような感覚でいるんだろう。

Aちゃんが浮気をすることなんてない。
Aちゃんの気持ちは俺に向いている。
分かってる。ちゃんと伝わってる。

でも、とてつもなく不安だ。
一緒にいられないから。

厄介だな、と胸の内でため息をついた。
何でも素直に受け取ってしまうAちゃんを上手いこと丸め込んでいる黒尾くんが。

…ていうか誰だよ。

俺の可愛くて頭抱える程にニッブーい彼女にちょっかいかけてる黒尾くんって、誰なの？

イライラする。
彼氏がいるって分かってて手出してるの？
だとしたらタチが悪い。
一体どこまで本気なの？


A『…徹？』


Aちゃんの心配するような声にはっとする。
真っ直ぐとしたAちゃんの目とかち合うと居心地が悪くて、目を伏せた。

どうAちゃんに伝えたらいいんだろう。
いや、そもそも伝えるべきなのかな。

Aちゃんは警戒心は薄いけれど、意外としっかりしているのを知っている。

ーー“黒尾くんともう会わないで“。

そう言ってしまうのは簡単だ。
でも、それを言ってしまったらAちゃんはどんな顔をするんだろう。
どんな気持ちにさせてしまうんだろう。

たくさん我慢を、寂しい思いをさせている分際で、Aちゃんの交友関係や行動に制限をかけて縛り付けるなんて、それは束縛だ。

…信じなきゃいけないのに。


及川｢Aちゃん｣

A『ん？』


溢れ出しそうな汚い感情を呑み込む。

俺とAちゃんを繋ぐのは積み重ねてきた時間と言葉だけ。


及川｢大好きだよ｣


心の底から想ってるんだ。

だから、どうか。
俺から離れないでいて。

酷く冷たい声→←友達なんだよね？

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