【及川徹落ち】18000キロメートルの恋 2nd【黒尾鉄朗】

クラゲみたいな女 ページ38

黒尾｢どこが可愛いのか分かんねー…｣


ゆらゆらと揺れるチンアナゴを見て黒尾は目を細めた。


A｢可愛いじゃん！ほら見て！あそこのチンアナゴ喧嘩してるから！表情豊かなんだよ！｣

黒尾｢はいはい、そーだね。可愛いネー｣


よしよし、と言って黒尾は私の頭を撫でた。
まるで子供を宥める親みたいだ。


A｢どこ見て言ってんだ。私じゃなくてチンアナゴ見ろよ｣

黒尾｢いーよ。お前の方が可愛いし｣


そう言って緩く笑う黒尾に、不覚にもほんの少しだけドキッとして目を伏せた。

少し前の、
“寿司食いたくなってきたわー”
発言にはロマンチックの欠片も無くて、うわ…こいつないわ…って引いたけど、黒尾は女の子の扱い慣れてる気がする。

練習台いるのかなこれ…と疑問に思いながら、クラゲのいる水槽に移動する。

黒と青の世界。水槽の中でゆらゆらと漂うクラゲがものすごく幻想的で、ぼーっと見惚れる。
口開いてんぞ、と黒尾に笑われた。


A｢…ねぇ、黒尾って好きな子いんの？｣


気になって黒尾に尋ねる。
すると黒尾は、なぜか呆れたように一瞬目を細めて、それから答えた。


黒尾｢いる｣

A｢どんな子？｣

黒尾｢…クラゲみたいな女｣

A｢綺麗ってこと？｣

黒尾｢いや、全然。顔はめちゃくちゃ普通。その辺にいくらでもごろごろ転がってるレベル｣

A｢…えー？じゃあどの辺がクラゲ？｣

黒尾｢掴みどころねーところ｣


掴みどころがない…？
ゆるふわ系の天然女子ってことか？

っていうか黒尾も大概掴みどころがないんだけど。
掴みどころのないやつは掴みどころのない子に惹かれるのかな。


黒尾｢バカで、口悪くて、ガキみたいで、女じゃなくて男なんじゃねぇかってたまに思うし、鈍感でムカつく｣

A｢え？悪口？｣

黒尾｢でも笑うとすげー可愛いし、ころころ変わる表情とか見てて飽きねーし、真っ直ぐで迷わず人を助けるところとかすげー好き｣


黒尾が柔らかい表情を浮かべて好きな女の子について語っているのを見て、ホントにその子のこと好きなんだな…って伝わってきた。

自分から話を振っといてアレなんだけど、黒尾との恋バナにこそばゆくなって、ふっと笑った。
そんな私を見て黒尾は何を考えるか分かんない顔を浮かべていた。

無性にキスしたくなる→←練習じゃなくて本番だから

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