バイトはつらいよ

そして高本くんは消えた(中) ページ12

こうしてスクロールして見ている間にも次々と届くメッセージに、なんだこいつ怖すぎだろ…と思いながらも、

明日も朝早いし眠いから寝よ☆

と、目の前の出来事を頭の隅へと追いやり、推しの生配信を垂れ流しながら幸せな眠りについた私だった。
そう。私の現実逃避の速さはくノ一並みだった。

ーーそれからも謎のメッセージは続き、見てはいたもののあまり気に留めてはおらず、一週間ぐらい経った時のこと。


高本｢何で無視すんの？｣


私のバイト中、シフトの入っていない高本が店にやって来て、めちゃくちゃイライラした顔で尋ねてきた。


私｢何が？｣

高本｢メッセージ送ってるんだけど届いてない？｣

私｢どこに？何を？｣

高本｢お前の電話番号にメッセージ送ってるんだけど｣

私｢…高本くん私の電話番号知らないよね？｣

高本｢裏に書いてあるじゃん｣


ほらアレ、と高本くんが、レジカウンターの中にある鍵付きの収納棚を指さした。


高本｢アレ見てお前の登録しといた｣

私｢………｣


その瞬間、全てを察した。

高本くんが指さした収納棚には、大事な書類やお客さんの個人情報、メーカーさんの連絡先等をしまってある。
そしてその中には、ウチの部門のメンバーの緊急連絡先も入っていた(他の仲良しな部門とかはL○NEグループ作ったりしてるけど、ウチは劣悪なのでこうしてる)。

あーそっかそっかぁ。ここ一週間のあのやべーメッセージは高本くんだったのかぁ。ていうかーー、

べつに連絡先交換しなくてもいいようにそこに情報書いてるんだから、用もないのに勝手に登録して連絡してくんじゃねぇよ！！！


私｢…知らない人からあんなにメッセージ送られてきて怖かったんだけど｣


爆睡するくらいにはどうでも良かったけど。


私｢あと学校忙しいし、返信してる時間無いから｣


最近遊び呆けてたけど。忙しくても返信するぐらい余裕だけど。

…でも、高本くんのこの行動にはゾッとしたし、同じ人間として嫌悪感を抱かずにはいられなかった。無理。こいつマジで無理。


私｢メッセージ送られると困る｣


苛立ちを隠せずに、言いたいことをなかなか言えない私にしてはハッキリと伝えるとーー、


高本｢きっつ。…だから彼氏できないんじゃない？｣


もう頼むからお前は口を開くな。

彼氏とか彼女とか相手がいることを是とする世の中なんてもう遅れてんだよ！！令和はもう多様性の時代なんだよ！！

しばくぞ！！

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