バイトはつらいよ

ちっちゃいおばちゃん事務員 ページ2

初出勤当日は土曜日の朝10時から。
緊張すると眠気に襲われるタイプ(きっと強制スリープモードに切り替えようとしているんだと思う)の私は、朝からバチクソに眠かった。

初出勤だし少しでも印象良くしていこうと、いつもより顔面工事を丁寧に行う。…が、５分で終わった。つまりいつもと同じだった。

出勤すると、事務所で待ち構えていたのは、キューティクル事務員さんではなく、可愛いちっちゃいおばちゃん事務員さんだった。
ちっちゃいおばちゃん事務員さんに連れられて、タイムカードのことや、更衣室、休憩室を回って説明を受ける。

一通り案内をしてもらって事務所に戻る間、ちっちゃいおばちゃん事務員さんは尋ねてきた。


事務員｢ジャ〇ーズ好き？｣

杏月｢えっ？はい｣


急にそんな質問をされると思っていなくて、反射的に返事をしてしまった。


事務員｢やっぱり。好きそうだと思った！そういう顔してるもん！｣


どういう顔だよ。
中学の頃はどハマりしてたけども、今は全然だよ。
某配信サイトで配信しているネットアイドル(蓋を開ければギャンカス集団)にはどっぷりハマってもう三年箱推ししてますが。

ペラペラとキ〇プリについてマシンガンの如く話し出す可愛いちっちゃいおばちゃん事務員さんを前に、もう引き返すことなんてできず、お得意のヘラヘラ笑いで適当に話に合わせておいた。

事務所に戻ってくると一時間のビデオ研修が待っていた。
タブレットで接客の注意点などを延々と見ているとやっぱり眠くて、うとうととしていた。傍から見てると舐め腐ってるようにしか見えなかったと思う。


事務員｢今寝てたでしょ｣

杏月｢すみません。緊張すると眠くなる人間で｣

事務員｢…？何それ？？｣


ちっちゃいおばちゃん事務員さんはマジでポカンとしていた。
そりゃそういう反応するよな。
私だって意味分からんし、共感してくれる人に未だかつて出逢ったことはない。

ビデオ研修を終えると、ついに働く売り場へと案内される。
担当部門のレジカウンターの中、私を待っていたのは、派遣社員、加賀さんだった。

すんげえキツそうな人だった。実際キツかった。
私は物覚えが悪いタイプで、それはそれはもうシバかれた(言葉で)。

昔こそは豆腐メンタルだったものの、今はゼリーメンタルへと成長を遂げている私は、踏ん張った。

覚えられないことはとにかくメモ。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥のことわざを元に、少しでも分からないことは分かるまで聞き続けた。

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