貴方に捧げる人生【梶裕貴】 (ページ35)

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3年後
幼稚園デビュースタートの前日。

｢お絵描きしよ！｣

兄｢もうねる時間だよ？明日起きれなくなるよ？｣

｢ちょっとだけ、ね？ちょっとだけ！｣

兄｢仕方が無いな…ほんのちょっとだよ？｣
｢やったぁ！｣

Aは興奮状態でなかなか眠りに付けなかった。
兄を巻き込みお絵描き。

兄の描いた絵を真似て、違う紙に描く。

兄の描いた絵に色をのせていく。

兄が3枚目の紙に手を伸ばそうとした時

兄｢あ…寝たか…｣

Aは紙に頬をつけて寝ていた。

兄｢……俺、ちゃんと兄ちゃんやれてるか…?

Aを俺みたいな人生じゃなくて、幸せな人生にさせてやれるのかな…

これからもずっと…俺がお前を護るから…

幸せになれよ……｣

｢いってきまーす！｣

朝8時。

昨日夜更かししたせいで寝起きは最悪だったA。

兄も祖母だけでは無理だと判断し見送りまでして、遅刻しそうになりながらでも猛スピードで学校に滑り込んだ。高校2年の最初の日である。

今日からいつもとガラリと変わった生活をする。

兄は2年で進路の関係で帰りが遅くなり、幼稚園と祖母に頼りきることになる。

Aはとりあえずここ1週間は幼稚園でもなんとか友達と仲良くしてると先生から教えて貰った。

祖母には幼稚園の話はあまりしないそうだが家に帰ってからも“お絵描き”“ぬりえ”“お人形遊び”と1人で楽しそうに遊んでいる。

まだひとり遊びが出来る子でよかったと兄も祖母も一安心。
兄が帰ると甘えて｢遊んで｣と言っては来るが勉強をしてると知りだした頃から勉強中に声をかけてくることはなくなった。

しばらく経ったある日。Aが鼻をすすりながら勉強中の兄の背中にそっと頭をつけてきた。
びっくりして振り返るとお気に入りのぬいぐるみを抱えたAがいた。兄の目にはAの涙が写った。

兄｢A…? どうした…? お兄ちゃんと遊びたいのか……?｣

ココ最近ずっと勉強ばかりであまり構ってやれなかったかな…と思うがAの答えは違った。

『お兄ちゃん…学校楽しい……?』

兄｢え……?｣

『A、お友達に悪いことしてないのにみんないじわるしてくるの…』

兄｢………っ…｣

『お兄ちゃんのお友達はいじわるする…?』

言い返す言葉が全く思いつかず何も考えれなかった。

目の前には話したことで悲しさが増して涙がこぼれるA。

初めての経験だった。

幼稚園児同士ののいじめだ。