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03.動き出す ページ3

最近はゆっくりお風呂に浸かる時間すらなかったから、今日ぐらいはゆっくり浸かろう。




久し振りに入る湯船。肩まで浸かると疲れがどっと溢れだしてくる。




はぁと盛れるため息。周りの子が続々と就職先を決めていく中、



私はいつまでも決まらない。軽くというか、だいぶ焦っている。



私は無事に社会人になれるのだろうか。



ニートになんかなったら、来年の廉の誕生日は情けなくてお祝い出来ないな、とまたため息。




こんな時に廉がいたら、「焦ってもしゃーないやん、落ち着けや」って面倒くさそうな顔なんかしちゃって、


そんでもって廉の武器だったソフトな関西弁を使いこなして頭を撫でてくれるのだろう。



今日だけは、と廉に想いを馳せ始めたら歯止めが効かなくなって気付けば逆上せていて、




フラフラになりながらお風呂から出る。




下着を着て、その上に絶対に廉に見られたくないようなヨレヨレのスウェットを着て、髪を軽く拭きながらリビングに戻る。






ガヤガヤと聞こえるテレビの音。




…あれ?私、テレビ付けたっけ??



不審に思いながらもリビングを覗いてみれば、入口からは誰も見えない。



水分を欲してる身体がキッチンへと向かえば、足の向かう先からまたゴソゴソと何かを漁る音。




「…ぇ、ドロボウ、?」




思わずもれた掠れた声。シーンと静まり返るリビング。



どうしようどうしようどうしよう。こういう時ってどうすればいいの?



まずは警察?あ、でも携帯はキッチンを通り過ぎた所に置いてあるし、



万が一犯人が凶器を持ってて、見つかったりなんかしたらどうなるか分からない。




軽く頭がパニックになりながらも、玄関まで戻って傘を手にする。




お気に入りだったけど、命が助かるなら…!!




「わああああ!!!」





傘を振り回してキッチンに突入する。



目をぎゅっと瞑っているから、相手の顔は見えない。



男だろうか、女だろうか。




バシッと掴まれる傘。私の動きも一緒に止まった。






「…ばっ、アホちゃうお前!!!危ないやん!!」






頭の上から聞こえる少しだけ高い甘い声。



ずっとずっと聞きたかった方言混じりの声。




ぎゅっと、何故だか胸が苦しくなる。
























止まったままのはずの時間が、少しだけ動いた気がした。







*

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作者名:みう | 作成日時:2023年12月5日 21時

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