StLtH19 (ページ38)

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Alan Side

Aに言わなくちゃ、と咄嗟に思った。
俺だって非日常的な出来事に冷静では居られなくて、でもそれ以上にきっと彼女の方が冷静では居られなかったであろう。

Aは病院に着くと、泣きながら「・・・あらん、」と俺の両腕を掴んだ。

「じんは？ねえ、じんは？」

真っ赤に濡れた目が不安げに揺れて、唇から色がなくなっていく。

顕「落ち着いて、大丈夫だから」

「・・・じんは？」

顕「中で寝てる。大丈夫。無事だよ。」

「っ、」

彼女から苦しいほどの嗚咽が溢れて、思わず座り込みそうになったのを支えて病室に入るように促した。

Aは深呼吸をすると病室の取っ手をゆっくり掴んだ。

顕「・・・男の子が信号渡り切れなくて待ってたら前から来た車の速度が速くて轢かれる寸前だったらしいんだけど、なんとか避けて。その衝動で、頭と腕を打った。でも、大丈夫」

さっき検査が終わって、目立った異常はなかった。

顕「腕の擦り傷で済んだって」

「・・・っ、」

そういえば、Aは静かに神宮寺の手をそっと握って「ごめんね。」と口にした。
その横顔は今まで見たどんな表情よりも、悲しそうで。痛々しくて、見てられない。

「ごめんね、ごめんっ・・・」

聞こえるはずがないと分かって、そう口にする。

顕「・・・」

「っ、」

自分の額を神宮寺の手にくっつけて、ただ泣いていた。

やっと会えたのに。

こんなの二人だって望んでなかったはずだ。

泣き続けるAを見つめることしか出来ないけど彼女の表情が、全てを物語っていた。

胸が張り裂けそうだった。

Aが神宮寺を大切に思うその気持ちが、痛いほど伝わって来る。

彼の指を握る手がどんどん強くなって、神宮寺から「んっ」と小さく声が溢れてAは咄嗟にその手を離してその場から離れた。

目を泳がすと、あたふたとその場から去っていく。

顕「A、いいの？」

「・・・っ、」

彼女は泣きながら病室から離れると、「着いてこないで」と静かに声を上げた。