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You Side
「この前は、ごめんなさい」
ーうん、俺もごめん
みゅうさんの申し訳なさそうな声が聞こえて、胸が痛くなる。
なんだか騒がしそうな向こう側の雰囲気に私は口を噤んだ。
忙しいのかな。忙しそうだ。
「あの、大丈夫です」
ーえ?
「心配掛けてごめんなさい」
私は本当に大丈夫だし、みゅうさんは自分のことを優先してね。と言えば、トーンの落ちた声が聞こえた。
ーA。
正直なところ、少しだけ一人になりたかった。
全てと距離を置き、答えについて考えたかった。
騒がしい向こうから、みゅうさんを呼ぶ声が聞こえてみゅうさんが慌てたように電話から離れた。
ーごめんA
「はい」
ーもう行くね?
「はい」
ごめんね、また電話する。と慌ただしく電話を切られると、私はため息を吐いた。
・・・何か、変わるのだろうか。
このままこの関係を進めて、何かが変わるのだろうか。
この関係に、意味があるんだろうか。
分かってはいたけど、会えないのならこんなに気持ちになるのも当たり前で。
誰もいないリビングでただため息を吐くと、早めに夕飯の支度に手をつけた。
支度途中で怜央くんが帰ってきたり、謙さんが帰ってきたり、少しだけ気分が落ちてたけどみんなは相変わらず明るく私に接してくれて。
有難い反面、すごく申し訳なくなる。
・・・私、人に気を使わせてばかりだなって。
今日は3人だけですね、とお話をしながら食事をしようとしていた時だった。
謙「あれ、さっきから電話鳴ってるけどAのスマホ?」
「え?鳴ってました?」
怜「うん、なってる」
怜央くんが手にとってくれて「あれ、顕嵐だ」と勝手に電話に出た。
すると怜央くんの顔が途端に変わって「A」と静かにスマホを差し出した。
「ん?」
怜「急用」
「あ、うん」
「もしもし?変わったよ」と小さく言うと電話の向こうの顕嵐はなんだか焦った様子で「A、落ち着いて聞いて。」と告げてきた。
顕嵐から告げられた真実は、非日常的なその単語の羅列は、私の思考を止めるのに十分で。
その意味を理解した瞬間、私はエプロンを投げ出し謙さんと怜央くんの声を無視すると、「行かないと」と言ってすぐさま家から出た。
終わった、と思った。
これから幸せに生きれるはずない、と思った。
これ以上、何も失いたくなかった。
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作者名:愛美 | 作成日時:2019年3月10日 20時