ＬＯＶＥＲ'Ｓ- [ 短編集 ] -

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オーナーが変なことを言うから、
あの子を見かける度にビクッとするようになっちゃった。





けどもとより関わりがあるわけでも何でもない。

目も合わなければ話をするわけでもないし本当に何を根拠に？って思ったんだけど。







「っ、」







仕込みのためにドアを開ければ
カウンター席に突っ伏すラウール氏の姿があって
こちらはうっく、と息を呑む。





彼もベルの音で私に気づいてしまって

「あ、」と声を発する。







「こ、…こんにちはー」

「……」

「………」






「よし、仕込み仕込みっと、」とか気にしてませんよっていう風な態度でキッチンに隠れてから

何ッッッだアイツ！！！！！と一気に湯気が上がる。





いくらオーナーの息子だからって無視はないんじゃないかなあ？無視は。





むかつくむかつくむかつく、と誰にも聞こえない声でしゃがみながらゴニョゴニョ呟いていると

「ねえ、」と背後から声をかけられてビクウッと肩と心臓が震える。







「冷蔵庫のやつ食べていい？」






いつも食べてるやんけと思ったけど
親切に「ええ、どうぞ。いくらでも」と笑顔を貼り付け外行きの声で教えて差し上げた。






「どれ食っていーの？」

「へ？いや、どれでも…」

「分かんない」






あーっどれでもいいって言ってるじゃんか！！！
って思いながら彼の前に立って背伸びして冷蔵庫を見る。




「この３つのうちどれでも」と言おうとしたら

つま先が耐えきれずにガクッと崩れてよろけた。






「っぶね、」。






そう呟いて咄嗟に私を支えるラウール氏。


支える、…というよりバックハグみたいな形になってしまっていることに瞬時に気づく。







「ふーん。これ全部食べていーの？」

「…っへ、あ、は、はい、」

「コレって全部あんたが作ったの？」

「…そう、ですけど」







ふーん。とか

あんた。とか色々気になるけど


いや。待って。その前に。




何で………ハグしたまま？







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