太宰治専門の必殺仕事人 ページ4
「まったく太宰は、女性を見ればいつもいつも口説いて。少しは自重しようと思わないのか」
あの後、翡翠は依頼人から内容を聞き、お見送りを終えると、太宰に軽く説教をする。
「無理だね。私にとって、美女に心中を誘うのは、もはや習慣なのだよ」
「それに巻き込まれる方にとっては、迷惑だ。不愉快だ」
「でも、大半の人は頬を赤く染めるよ」
「それは、ただの気の迷い。自分からして見れば、ただの喜劇。茶番劇」
「中々言うねぇ。ヤコちゃんは私の魅力に気づいていないだけだよ」
翡翠はミニハンマーを太宰に投げる。だが、今度は避ける太宰。
「ふふん。そう何度も当たる訳が……ヘブッ」
何故か、天井から"飴玉"が落ちてきた。
「よかったね、太宰。天井から飴玉が落ちてくるなんて、何か良いことがあるんじゃない」
「いや、これ。どっちかって言うと不幸がありそう。と言うかどういう仕組みなの、これ」
太宰の頭にたん瘤ができていた。先程落ちてきたのは、"飴玉"と書かれている小さな鉄球であった。頭に当たれば、普通大怪我する。
「ほら、いつまでそこでボケっとしてるわけ。さっさと働け」
翡翠は太宰の質問に完全にスルーして首根っこを掴む。
「ぐへぇ……ヤコちゃん、首締まってる」
「ヤコちゃんって呼ぶな。それと、それくらい我慢しろ。そして働け」
太宰のデスクに彼を連れてくると何処から出したのか、黒い頑丈な鎖を使って太宰を椅子に縛りつける。
「ちょっとー、ヤコちゃん此れ、結構キツイ」
「キツイのが嫌なら溜めた書類を消化しろ。そしたら、解く」
翡翠は太宰の文句をそよ風に思いながら自分のデスクに向かう。
「いつもすまんな、翡翠」
「いいよ。同期なんだから、困ったら協力する」
翡翠が笑顔で答えると国木田は肩を震わせて感謝した。
「本当に、お前はいい同僚だ」
「そんなの国木田も同じでしょ。自分も助けられてるから、おあいこだよ」
翡翠が肩を叩いて、国木田を励ます。
これが、探偵社でよく見られるいつもの光景だ。
そして、包帯男とハンマーガールの変わりない日常である。
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作者名:リエン | 作成日時:2020年4月10日 3時