Love resume (ページ37)

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[Maruyama] ２ページ37

しばらく俯いたまま座っていると

「あの…これ…」

誰かの声が聞こえたのと同時に、目の前に差し出されたペットボトル

どこかの天然水らしき、ミネラルウォーター

ふと顔をあげると

『あっ…』

さっき電車の中で声をかけてくれた人だ

「良かったら、どうぞ」

優しそうな瞳、ふわふわの髪の毛、可愛らしいエクボ…

思わず見とれてしまった

「あっ…ごめんなさい…知らない人からのなんて、受け取れないですよね…」

さっきまでの笑顔が消えて、明らかにしょんぼりしている

『いえ…いただいてもいいですか』

確かに知らない人から物を貰うのには抵抗がある

だけど、喉はカラカラだし

それに、未開封なのもわかるし…大丈夫よね

「はい、どうぞ」

ペットボトルを差し出した笑顔は、キラキラ輝いていた

『ありがとうございます…いただきます』

キャップを開けてゴクリと飲む

喉をひんやりした天然水が通っていく

これだけ冷えてるってことは、買ったばっかり？

『あの…これのお代を…』

「気にしないで大丈夫ですよ」

『そういう訳には…』

「それより、あの…隣、座ってもいいですか」

『あっ、はい…どうぞ…』

とりあえず財布から小銭をだそうと、鞄に手を入れる

「さっき…変な事、されてませんでしたか…」

『えっ？』

もしかして、この人、気づいてたの？

「いや、なんか、あなたの後ろにいた男の動きがおかしかったから…」

どうしよう…ホントの事言ってもいいのかな…

『…はい…たぶん触られてたと思います…』

「大丈夫…では、ないよな…どうします？駅員さんとかに言いに行きます？」

『いえ…声かけてもらったあとすぐ、へんな感触なくなったので…それに、顔とか見てないし…』

「そっか…後ろやったもんな…見えへんよな…」

柔らかい言葉がなんだか染みてくる

ひとりだったらどうなってたんだろ…

少しの沈黙の後、次の電車がホームに入ってくるというアナウンスが流れてきた

「そろそろ行きますね」

立ち上がろうとするこの人の上着の裾を、咄嗟に掴んだ

『あの…これ…』

私の手のひらに乗せた五百円玉

「ん？」

『お水のお金…』

「ｱﾊ、そんなに高いものやないし…それに僕が勝手に買ったものやから」

『でも…』

「ﾌﾌﾌ、じゃぁ、こうしましょ、明日また電車で会えたら、その時に」

『明日？』

「そ、明日…仕事お休みですか？」

『いえ…』

「じゃ、明日…また」