【銀魂】沖田隊長、好きって何ですか？【沖田総悟】

いつの間にか ページ8

「…俺もよォ、」

「…」


ぼんやりと。旦那は私と同じように、冬の高くなった空を見明けながらゆっくりと口を開いた。旦那がこうして言葉を紡いでいる時間は、なんだか時間がスローになったみたいに進んでいる気がする。彼の気だるげな雰囲気がそうさせるのだろうか。空の雲は、彼のようにふわふわと気ままに風に吹かれている。


「よくわかんねぇけど、そーいうのっていつの間にかなってるもんじゃねーの」


好きってのはさ、と。ベンチの背もたれに背中を預ければ、ギシリと軋むような音が微かに響いて、そんな音をたてた旦那は両腕を頭の後ろで組んだ。青空から彼へと横目を向けて、ちょっと思った疑問をなんとなくぶつけてみることにした。「旦那は、人を好きになったことがあるんですか？」と。

すると旦那な若干目を泳がせながら口元を不自然にひきつらせた。


「そりゃあ、まぁ、それなりに…？」

「…ヘェ」

「何その感じ」


視線を再び青空に戻しながら適当な生返事を返してみれば、「お前が聞いたんだろーがコノヤロー」とのクレームの声が飛んでくる。いや、多分あの反応は人様に言えないようなロクなもんじゃないんだろうなぁ、と思っただけである。その他には何も思っていない。


「…ずっと」

「ん？」


そう、ずっと、ずっとなんだよ、と。私は思う。心の中で、誰かに語りかけるように、「ずっと、」と呟いている。それは多分、ふてぶてしい顔をぶら下げた、彼に向けた言葉なのだろう。


「ずっと、考えてるんです。沖田隊長に、好きだと伝えられてから」


ずっと、彼への気持ちを考えているんです、と。私は独り言のように口にしていた。暖かいお茶は、冬の冷気の中でもまだ暖かいまま保たれていて、それで手を暖めるようにギュッとした。手のひらから伝わる温度にホッ、としながら、続ける。


「…でも、ずっと考えてるのに、見つからないんです」


…私が、沖田隊長に向ける気持ち。それらの中から、彼への『好き』という感情を探している。けれど、それはいくら探しても見つけることが出来なくて。それらしきものは見当たらなくて。


「…わからないです」


…『好き』を知らない私が、そもそもその気持ちを見つけ出そうだなんて、無理な話なのかもしれないけれど。

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