【銀魂】沖田隊長、好きって何ですか？【沖田総悟】

ポエミー ページ7

「…旦那、ひとつ聞いてもいいですか」

「ん？何を」


珍しいねェ、お前が俺に質問なんざ、と。何がおかしかったのだろうか、楽しそうに口角を上げながら旦那は私を横目に見据える。私は真剣に旦那の赤みを帯びたような目を真っ直ぐに見つめながらに、慎重に口にする。


「…好きって、何なんでしょうか」

「随分ポエミーだなオイ」


ポエミーだろうが何だろうが関係ない。こちらは至極真剣に、とても真面目に聞いているのだ。こんなこと本当なら人様に言いたくはなかったけれど、背に腹は変えられない。なんせ私はその『好き』という感情を知らないのだから。今まで持ち合わせたこともない。手掛かりなんてひとつもないのだから仕方がない。例えその相談相手がこんなちゃらんぽらんだとしてもだ。


「俺に聞くの？それ」

「いや、多分ただれた恋愛経験しかないんだろうなとは思いますけど」

「Aちゃんさぁ、俺にばっかり当たり強いよね。俺のことお嫌いですか？ん？」


少なくとも好きではない。恋愛云々をまったく知らない私でもそれだけは自信を持って胸を張って言えるだろう。彼は私の反面教師という立ち位置なのだ。そんな旦那の言葉は無視を決め込み、彼から視線を外しては何処か遠くを見据える。冬の高い空には、自由に漂う雲が浮かんでおり、優しい輪郭のそれは空の青に溶け混んでいくようだった。目を細めて空を眺めて、「…私、分からないんです」と。


「…好きが、分からないんです」

「なんか乙女ちっくな台詞だねェ」

「旦那が乙女ちっくっていうの、なんか気持ち悪いですね」

「ねぇそろそろ泣くけどいい？」


素直な感想を述べてみれば、旦那からは湿っぽい視線が飛んでくる。こめかみ辺りにそんな湿度の高い視線を感じながらも、それにも構いもせず、私は小さく小さく、耳を澄ませなければ聞こえないような溜め息をひとつ吐いた。音もなく風に掻き消されていくそれには、確かな私の疑問が含まれている。


「…人を好きになるって、どういう感じなんでしょう」


詩人みてェなこと言うなよ、と。旦那は言う。詩人になったつもりはないのだけれど、仕方ないのかもしれない。今の私の悩みそのものが、なんだか哲学的だし。

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