隠せない ページ43
…グラリと。沖田隊長に掴まれた手をグイッと引っ張られて視界が反転して、私は小さく声を発して反射的に目をギュッと瞑った。いきなりすぎる展開についていけなくて、私の頭は混乱してしまう。何が起きたのか、一瞬分からなくて、けれどゆっくり、恐る恐る目を開いてみれば、私の目の前には沖田隊長がいて、何を思っているのかよく分からない表情で私を見下ろしていた。
私の背中には、固い畳があって、どうやら私はそこに寝転がってしまっているらしい。呆然としながら、目をパチクリとさせながらに、私は沖田隊長の顔を見据える。逸らすことも、逃げることも忘れて、ただただそこにある、そこで私を見つめている、ゆらゆらと不安そうに揺れている赤い目を見つめ返した。まるで、その目の中で炎が燃えているみたいだ。
…彼の端正な顔は、様々な感情が混ざって、でもそれを私には見せまいと必死になって隠そうとしているような、そんな複雑な表情をしていた。色んな色の絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜて、けれどそれを白い絵の具で隠そうとしているような。けれど、どれだけ隠そうとしても、その奥に確かにある色は、感情は、その白では隠し通すことはできないのだ。
「……た、いちょ、ぅ…?」
「……お前は、なんでそんな……」
……返って彼は、酷く苦しそうに、私の目には見えるのだ。歪に歪んだ表情で、私を見下ろす沖田隊長。今にも、何かを間違えたら泣き出してしまいそうなくらいに切実な顔をしていて、寂しそうな声をしていて。私の胸はギュウッ、と強く締め付けられるようで、痛みが帯びていく。
押し倒されているという事実さえも忘れてしまうくらいで。今私の身に起きていることなんか、どうだっていいくらいに、今の彼は脆く、崩れてしまいそうに見えた。
……どうして、貴方は、そんな顔をしているの?
「……おき…、」
「……の、」
「え…?」
…チク、タク、チク、という時計の秒針が進んでいく音と、暖房から発される微かな機械男、そして、私の心臓の音が響いているこの部屋に、小さく小さく、耳を澄ませていないと聞こえないくらいの声で、沖田隊長は口にした。けれどその声は私にはうまく聞こえなくて、私は「なんて…?」と聞き返した。すると。
「……人の気も知らねェで」
「…ぇ……ッ、…!!」
……苦しそうに、胸の奥から言葉を発したような絞り出した声で彼は言うと、
…その口で私のそれに、少しだけ乱暴に触れた。
1430人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨散 - やばいいいいいいいいいいいい!!沖田のツンデレ?感があああああああ!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 理央さん» 理央さん!コメントありがとうございます!!面白いですか!私自身も色々試行錯誤しながら書いているのでお楽しみ頂けているなら嬉しいです!!引き続き少しでもお楽しみ頂けるように頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月25日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
理央 - ものすごく面白いです! (2018年1月25日 21時) (レス) id: 703121ec8e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - りんさん» 拗らせてます…(笑) シリアス書き出したらやっぱり止まりませんね…この拗らせてシリアスがパァッ、と盛り上がるように頑張ります!テスト勉強は……頑張りたくはないですが頑張ります(泣笑 (2018年1月3日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミナさん» ミナさん!ありがとうございます!一番好きだなんて……嬉しいお言葉をありがとうございます!!長ったらしくやっていますが、今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!沖田隊長にたくさんキュンキュンしていってください!!頑張らせて頂きます!! (2018年1月3日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年12月12日 18時