嘘 ページ41
「…沖田隊長、」
嘘ですよね、と。私は迷うことなく沖田隊長にそう言った。無礼なのは承知の上である。いつもの私なら、そうですか、すみません、と引き下がっていたかもしれない。けれど、今はどうしてだろうか、それではいけない気がした。ピリピリとした険悪な空気が漂うなか、私は少しだけ震えたような声で沖田隊長に向き合う。逃げちゃいけない、と、自分に言い聞かせた。
「…お願いです沖田隊長、何かあったんですよね?」
「…だから何でも…」
「ないわけないですよね」
ならどうして最近目を合わせてもくれないのですか、と。沖田隊長の言葉を遮って私は問い詰める。あぁ、これはやらかしたかもしれないなぁと冷や汗をかきながら、汗が滲む手のひらをギュッと握り締めながら、彼からの言葉を待つ。
…いつものパターンなら、沖田隊長が私に何かを問い詰めて吐かせるまで許してはくれないのだ。私だって負けない。折れてなんかやらないと自分を奮い立たせた。
「…沖田隊長」
「…それを、」
と、黙りこんでいた沖田隊長は不意に口を開いて、まるで睨み付けるように、恨めしそうに私を見据えた。
「ッ…」
「お前に言って何になるんでィ」
「何にもならねェだろ」と。
…沖田隊長に、こんな風に睨まれるのは初めてのことで、私の心臓はドクン、と嫌な音をたてた。生唾をゴクリと飲み込み、震える手を片方の手で押さえ付けた。怯んじゃいけない。ここでもうダメだって引き下がったっていたら、この雰囲気が長引いてしまうだけだ。そんなの、何のメリットもないもの。
「…分からないですけど……でも、沖田隊長、なんか、辛そうに見えるんです」
…一日中不機嫌で、眉を寄せて表情を強ばらせていて、そうじゃなかったら上の空でいるし、そんなの、放っておけるはずがないじゃないか。
「…聞かせてください、隊長」
「…ッ、」
…そう言うも、沖田隊長は何も言わないまま、フイ、とそっぽを向いてしまった。
「…見間違いだろィ、気のせいだ」
…ズキズキと、胸の辺りが鋭く痛みを帯びていった。そう言われてしまい、私はかける言葉を失ってしまう。顔ごとそっぽを向きながらに見間違いだ、気のせいだと言われても説得力なんて皆無だと言うのに、返す言葉が見つからない。唇を噛みしめて、畳の一点を見つめた。
…でも、やっぱり、これじゃいけない。
…沖田隊長だって、いつも、しつこいくらいに私に食って掛かってきたのだから。
「…沖田隊長!」
私は立ち上がると、沖田隊長と目が嫌でも合う位置に移動して、彼の目を見据えに行った。
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雨散 - やばいいいいいいいいいいいい!!沖田のツンデレ?感があああああああ!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 理央さん» 理央さん!コメントありがとうございます!!面白いですか!私自身も色々試行錯誤しながら書いているのでお楽しみ頂けているなら嬉しいです!!引き続き少しでもお楽しみ頂けるように頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月25日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
理央 - ものすごく面白いです! (2018年1月25日 21時) (レス) id: 703121ec8e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - りんさん» 拗らせてます…(笑) シリアス書き出したらやっぱり止まりませんね…この拗らせてシリアスがパァッ、と盛り上がるように頑張ります!テスト勉強は……頑張りたくはないですが頑張ります(泣笑 (2018年1月3日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミナさん» ミナさん!ありがとうございます!一番好きだなんて……嬉しいお言葉をありがとうございます!!長ったらしくやっていますが、今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!沖田隊長にたくさんキュンキュンしていってください!!頑張らせて頂きます!! (2018年1月3日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年12月12日 18時