【銀魂】沖田隊長、好きって何ですか？【沖田総悟】

乗った ページ27

…沖田隊長の部屋に副長のタバコからふわりと出現する紫煙が満ちていく。恐らく、きっと確実に沖田隊長がここに戻ってきたら「くさ」と嫌な顔を見せるに違いない。あからさまに嫌そうな顔をして、「土方の野郎後で殺る」とかなんとか、そんなことを口走るのだろう。そんなことを容易に想像出来てしまって、私はついつい小さく笑みを浮かべてしまった。

…まぁでも、私としてはそろそろ副長も禁煙に向かってはどうかと思うのだけれど。だんだん喫煙者が暮らしにくい世の中になっていっているし、健康にも良くないし。けれど、そう思っていてもこれはいつも仕事やら沖田隊長やらに疲れきっている副長の唯一の娯楽。……いや、マヨネーズもあるけれど、いつも疲労に襲われている彼にそんなことはとても私からは言えないのであった。


…鼻をすすれば、タバコのにおいが鼻孔を刺激してきて、少しだけむせそうになる。両親はタバコをたしなむ人じゃなかったから、真選組に来て初めてタバコのにおいというものを知って、未だに馴れていないなぁ、なんて思いつつ。さて、そろそろ仕事にもどるかな、と考える。沖田隊長は居ないけれど、一人でも片付けていかないと期限までに間に合わないし。そう、仕事仕事……。


……仕事、し、ごと…、


「…大丈夫か」

「…ダイジョウブデス」


…仕事しなきゃ、と考えただけで気分がドッ、と落ちてしまう。重力に負けて立ち上がれないまま地面にめり込んでいく勢いであった。肩を落として項垂れながらにそう返せば、「わ、悪いないつも…」と謝られてしまった。副長が悪い訳ではないのに、またもや罪悪感。


「ま、まぁ……そのうち沖田隊長も帰ってくるでしょうし……なんとか……」


も、持ちこたえます、と。ひきつった笑みを浮かべては彼に向けて見せれば、副長は副長で困ったような表情をしている。あはは……と力なく笑って、部屋に散乱する仕事の山を横目に見据える。今すぐ私の目の前から去ってはくれないものだろうかと思うけれど、現実はそう簡単ではない。残念ながら片付けるまで何処までも私を追い掛けてくるだろう。ああ怖い。


頭からキノコが生えているイメージで曖昧に笑っていれば、副長は口を開く。


「…まぁ、あんま無理してもいけねェし、これから女中のおばちゃんに頼まれて買い出し行くんだが、」


気分転換にでも一緒に行くか、と。その女中のおばさまに渡されたのだろう、買い出し内容のメモをひらりとさせながら、副長は私に提案した。


「行きます！！」


それに乗ったのは言うまでもない。

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