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『どうしてないんだ?』
机の上に積み重なった書類の束を神威は搔き分ける。しかしそれにより、無造作に置かれている紙は床へと崩れ落ちた
彼の探している目的の書類はなかなか見つからず、神威にとって、彼の会社にとって重要な書類であるために焦っているのだ
その時、何処かから着信音が鳴る。その携帯の居場所すらも見当がつかなく、三度目の着信でようやく姿を見せた
『もしもし?』
『ようやくでたな、社長』
電話の相手は彼の部下、阿伏兎のようだ。阿伏兎が溜息混じりの息を吐いたことにより、機械音がこもって聞こえる
『車、もう直ぐそっちに着くが準備はできてんのか?』
「あの娘がいなくても」そう付け足すように、阿伏兎は間を開けた。神威もそれに気付いたのか、ふん、と鼻であしらう
『……え、もうそんな時間だっけ?』
しかし、慌てて思考を戻して部屋の置き時計に目を向けた神威は、約束の時間が迫っていることを知る
今日は、高杉の家で会食をする予定であった
『ったくよォ』
『……それよりも、あの書類は見つかったのか?』
『……まだだよ』
苛立ちを込めた返答を返すが、阿伏兎は社長の機嫌をとっている場合ではない。
「は!?」と阿伏兎が大きな声を出したことにより、神威は電話を耳から少し離す
『ただでさえ、あの男の件が未だに収拾ついてないんだぞ』
『だいたいどうして家になんて置いておくんだ』
『すぐ物を失くすクセに』
ガミガミと説教を始める阿伏兎に対し、嫌悪感丸出しの顔をして神威は耳を塞ぐ。
その姿は相手には見えないのだが、彼は最後に一言素早く捲し立て、電話を切ってしまう
『仕方ないだろ
家に置いてある大事なものは、全部アイツが管理してたんだから』
切った後に彼が思うのは、「してた」ではなく「してくれていた」という言い間違えだった。
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さざんか(プロフ) - 更新お疲れ様でした…!そして素敵な作品を本当にありがとうございました!涙が出てきちゃう程良いお話で、凄く忘がたい作品になりました。完結から長らく経ってしまいましたが、出会えて良かったと心から思います。本当にありがとうございました。 (2022年3月13日 3時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
今日花 - とても良い作品でした。神威が不器用な、けれど優しいところに惹き付けられました。最後は結婚という結果で思わず笑みが溢れます。心に残る作品でした。 (2017年9月19日 18時) (レス) id: 53c7e05c46 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ななさん» ありがとうございます! 大好きとは、勿体無いお言葉!! 神威は難しくて苦戦していましたが、ななさんにそう言ってもらえたので、そんな苦悩は吹き飛びました! コメントと閲覧、本当にありがとうございます( ´ ∀`) (2017年8月12日 10時) (レス) id: 30ed3dcdf9 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 完結おめでとうございます!!とても面白くて素敵なこの小説、大好きです^^これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月6日 1時) (レス) id: f0f39f84a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - RTtk46NmHahsgrzさん» ありがとうございます! こちらの作品、悩みに悩んで進めて行った作品なので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。いつかまた、読み返してくださるとありがたいです^^ 他の作品も、もし良ければ読んでほしいです! また好きになってくださいな!! (2017年8月4日 10時) (レス) id: 731ff239df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年6月19日 20時