Love*4-38 ページ38
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(翔side)
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「お前、Aの舞台観に来い、」
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と俺に言ったのは
普段あまり接点のない先輩だった。
観に行かない、と決めていた。
週刊誌が張っているだろうし、Aを動揺させたくない。
劇場に入れば恐らくバレるだろうし、途中休憩が鬼門すぎる。
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お互い連絡先を知らなかったから、
やり取りはマネージャー経由だった。
だけどそのうち、第三者を経由するのが面倒になって、
相葉くんから連絡先を聞いて、直で連絡を取るようになった。
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「Aのこと泣かせんな、って言ったよな、俺」
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ああ、Aは愛されてるな、と思う。
これは彼女が外に目を向けた結果で、
そして彼女が他人に与える幸せの見返りだ。
Aの周りには、味方しかいない。
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「会われへんのやったら、せめてアイツが頑張ってるの観てやって、
褒めてあげるべきなんじゃねえの？」
「…」
「アイツが一人で必死で耐えて立ってきた1か月半が終わんだよ」
「、」
「お前が観てやれよ、」
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きっと、Aが他の誰かだったら、
彼はこんなことしなかっただろうと思う。
Aだから、やったんだ、相手が俺だから、ではなく、
これは確実に、可愛がっているAのため、で。
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用意されたのは、会議室のような部屋で、
テレビが一台、用意されていた。
劇場やロビー、楽屋があるフロアとは別の場所だったから、
誰かに会うこともなかったし、当然気づかれることもなかった。
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提案した彼は、ここに現れることはなくその日は顔を見ることもなかったけど、
劇場で観る、と言っていたから同じ建物内にはいるはずで、
それが細やかなカモフラージュであることに気づいたのは、
家に帰ってからだった。
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舞台に立っているAは、別人だった。
稽古中、彼女の身体しか残ってない、と思うことがあったけど、
それとは比べ物にならないくらい、工藤Aはあの場所に存在していなくて、
"王女"でしかなくて。
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王女として生きるマリーと、嵐として生きるAが、
リンクしたのは、彼女が処刑されるシーンで、息が止まる。
背筋を伸ばし、気丈に笑い、そして威圧的に目を細め、
愛しい恋人を想いながら死ぬ彼女は、とても美しかった。
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Aにしか、できない。
傍にいない間に、しっかりと一人で立つことのできたAは、
信じられないくらい成長していて。
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しばらくその場から、動けなかった。
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